映像
テレビ出演
『夜のスーパーヒットスタジオ』……と映像の終わり際に番組ロゴの表示。中森明菜、井上陽水、しゅっとした青年は玉置浩二なのですね。豪華なキャストです。
井上陽水が中森明菜より上の音域でハモっています。さすがの声域です。井上陽水が一度、一瞬ですがギターを握り直すような様子を見せるところがあったような(その瞬間弾いてない?)……激しい曲調ですが撫でるようなゆるいギターストロークです。
玉置浩二はエレキギターですね。激しくアーミングで揺らしたようなソロプレイが聴こえますが、プレイしているのは別のギタリスト…? 曲の前半と後半で井上陽水とハモリの声域をチェンジしているでしょうか?
弾ける・歌えるソングライターを二人率いた中森明菜は無敵の振る舞いです。曲のキャラクターにもマッチしていますね。
神宮球場
スモーク漂う雰囲気あるステージです。青い眼鏡をかけた井上陽水、そして高いビルの窓が宙に浮かぶような会場周辺の景色。どこかで見たなと思ったら、先日このブログで『ワインレッドの心』を鑑賞したときに見かけた映像と同じ機会のライブ映像ですね。神宮球場だと思います。
青い眼鏡、白いノースリーブ、ジーパン。これにリッケンバッカー(ギター)といういでたちが衝撃です(かつてそんなミュージシャンいました?)。フェイク(即興的な歌唱)が決まってますね。スーツでカチッと決めてヒゲを生やした玉置浩二と、ツルっとした小学生みたいにも見える井上陽水の風貌。対比がすごいです。歌唱は常人離れした奇跡のお二人。
曲について
中森明菜のシングル(1984)、アルバム『BITTER AND SWEET』(1985)、井上陽水のアルバム『9.5カラット』(1984)に収録。作詞・作曲:井上陽水。
中森明菜『飾りじゃないのよ涙は』を聴く
熾烈なハイハットのトリプレット。間断ありません。これ、人間にプレイできるのでしょうか(笑)打ち込みのシンセドラムのように聴こえますがプレイヤーの演奏でしょうか。ゲート(音の減衰を短く切ってしまうエフェクト)をかけたら人間のプレイでもこのような作為的な音のドラムスになる? エキセントリックなトーンです。スネアのタイミングにあわせてタンバリンも入っていますね。
中森明菜の声にもエフェクトがかかっています。位相を移ろわせて、シュワシュワさせた感じと言いますか、フェイズがかかった感じのする部分が後半にみられます。あまりボーカルに頻繁に用いるエフェクトではありません。挑戦的ですし、人と同じであることを良しとしない、革新を尊重する態度を感じます。
シンセの音もなんだか怪しげ(いい意味で)。3連のリズム・音符6つ単位で音階を下り・上りするフレーズ素早いフレーズ。同じフレーズをテンポをゆっくりにしたら、なんだかお化けでも出てきそう。『ゴーストバスターズ』のテーマソングを思い出します。年代も割と遠からずか。当時を感じる、シンセが大活躍のサウンドです。バッパーパパ…と派手なシンセブラストーンが目立ちます。
感想
“私は泣いたことがない”という歌い出しが聴き手を引き込みます。故意におどろかすかのような運転の車に乗せられても、平気なふうの主人公。でも、本当の恋を知ったら泣いたりするんじゃないか……などともいう。怖いもの無しのキャラクターのようにも思えるのですが、人並みに感情を動かしそうな気配もあります。主人公のキャラクターが、稀有なのですけれどリアルなのです。このキャラクターをそのまま中森明菜に重ねて誰もが見ていたのではないでしょうか。逸脱したエキセントリックさと、平凡な素の幼さを備えて見えます。別の曲ですが、“わたし少女A”と歌う作品もありますね。あやうい艶めきと純朴な輝きの調光が、この頃の中森明菜の魅力の一面だったのかもしれません。
青沼詩郎
ご笑覧ください 拙演