西か東か。北か南か。黒か白か。うどんかパスタか。パンかごはんか。そんな感じ(どんな)で、なにかと引き合いに出されるふたつの存在がある。
ふたつは、別に対立してるわけじゃない。なんなら、仲が良いことだってある。もちろん、本当に対立しているかもしれないけれど。ふたつはなんの関係もないかもしれないし、切っても切れない深い関係にあるかもしれない。
あんぱんはつぶあんか? こしあんか? カレーはビーフ・オア・チキン、オア・ポーク、オア・ラム、オア・ベジタブルズ? フィッシュ? シュリンプ? アザー?
カレーじゃなくハヤシライスか? チャーハンかピラフか? もう少し言おう。ビートルズか、ローリングストーンズか? オアシスか、ブラーか?
私が小学生や中学生だった頃のJ-POPも何かと比較した。L’Arc〜en〜Cielか、GLAYか。勝手に、対のものとして意識した。ミスチルか、スピッツか…ふたつはたまたま同じ業界や分野に同時期に存在しただけかもしれない。それから、「ゆず」なのか、「19(ジューク)」なのか…
YouTubeをふらついていたらこんなものを見つけてしまったから、そんなことを思い出した。
中学校に入ったとき、私はギターをやっている同級生のSくんと出会った。それで、2人で組んで、ゆずや19のコピーをさんざんやった。2人組だったけど、GLAYもL’Arc〜en〜Cielもやった。
それから20年以上経った今でも、私は音楽をやっている。当時デュオで演奏していたSくんとはだいぶ会っていない。私はひとりで音楽をつくって弾き語ったり、また別の筋で出会った仲間とバンド編成でやったりしている。
ひとりで弾き語りをしていると、間奏で「ギターソロどうすんねん」問題が浮かび上がる。もちろんギターソロのない楽曲構成なんていくらでも可能だ。そもそも問題じゃないかもしれない。
ただ、「間奏入れたい」。でも、「ひとり」だ。というときに、ひとつの答えをくれるのが「テンホールズ・ハーモニカ」だ。10個の穴があって、20本のリード(発音体)を持っている。吹く、吸うの動作でそれぞれのリードが震えて、鳴る。
テンホールズ・ハーモニカはスリムなボディなのもあって、バネの力ではさむホルダーに固定して首に掛けることができる。それで、ギターを弾きながら歌って、間奏でハーモニカを吹く芸当ができる。
ここ近年の私は、このスタイルでよく演奏するようになった。近年の自作曲の多くにハーモニカを使っている。というか、そうすれば間奏で楽器を主役にしたメロディを含めたパフォーマンスがひとりでもできるから、そのように編曲する、仕向ける、というところがある。
思えば、このスタイルを用いたミュージシャンで私が小学生や中学生だった時代に目立っていたのが、ゆずだった。
もちろんそれより前からいくらでもハーモニカを使って弾き語りをする人はいた。ビリー・ジョエル? ボブ・ディラン? 私の父はこの演奏スタイルを見て「長渕剛みたい」なんて言ったこともあった。
大人になって以降の私と切っても切り離せない演奏スタイルになったけれど、ずっと前、中学生だった頃に触れた音楽の影響が起源になっているのかもしれない。その頃の私は弾きながらハーモニカは吹けなくて、デュオを組んでいた相方のSくんがその役割をやっていた(私、不要だった?)。
ゆずの『サヨナラバス』を聴こうものなら、思い出込みでニヤけてしまう。上にリンクしたライブ動画は、ゲストを招いての、比較的彼らの近年の演奏である。
ゆずをプロデュースした寺岡呼人のバンド、JUN SKY WALKER(S)は私の出身地・西東京市のPR親善大使(令和元年10月29日〜)でもある。地元のパルコに来て演奏したこともあったらしい。
ジュンスカを知らずにいきなり「ゆず」から入ったりなんかしたら、ヒバリー・ヒルズ・コップに取り締まられるだろうか。そのまま大人になってしまったのでもう私は時効だろう。てか、私と同世代のほとんどはジュンスカより先にゆずを知る者が多数だったはずで、もはや集団摘発である。
青沼詩郎
『サヨナラバス』を収録したゆずのアルバム『ゆずえん』(1999)