愛の終り ザ・テンプターズ 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:松崎由治。ザ・テンプターズのシングル、アルバム『THE TEMPTERS IN MEMPHIS(ザ・テンプターズ・イン・メンフィス)』(1969)に収録。

ザ・テンプターズ 愛の終り(アルバム『ザ・テンプターズ・イン・メンフィス』収録)を聴く

ねっとりとした独特の質感のショーケンさんのリードボーカルと、ねっちりしたベーシックリズム、クワイア(バックグラウンドボーカル)、ブラスなどのオケが邂逅、化学反応しているみたいにオトがはなやかです。海外レコーディング作品ですが、カラっとしたサウンドというよりはむしろ土のニオイが強い。より世界的に普遍的なものに向かう、というよりはより局所的な熱さに向かった印象です。ホットスポットここにあり。

ドラムが左に寄った定位。スネアとキックとハットの入り乱れ方がトリッキーです。スネアとキックを両方同時に鳴らしてしまう瞬間のつくり方が巧い。そしてベースが弾く、弾く。16分割の音価でオモテのウラなどをつかってぐいぐい移勢させるなどビートに拍車をかけていきます。このバチバチのベースとドラムだけでも万聴に値するよ……

左のほうに女声のバックグラウンドボーカル。ベーシックリズムが実によく動くのに譲って(バランスをとって)か、動きは実に緩慢です。響きの壮麗さを演出します。右にはバーバッと音のオン・オフが効いた管楽器。ファットな印象で躯体の厚みを感じさせるサウンド。トリッキーでファンキーすぎるベーシックリズムに重さを加えてサウンドの姿勢を安定させます。

オルガンのピヨーっと回転して空気をかき回すスピーカー内部の機構までみえてきそうなサウンドが管楽器とも女声コーラスともまた違う、半透明な帯をかぶせてオケの熱い演奏の直射日光をいい感じに乱反射。

エレキギターの存在感が案外うすく、一瞬「いる?」と思いましたが短く呟きを断続させるみたいに局所にエッジをつくります。渋いお仕事。

“恋におぼれて 道に迷った子羊が なにも言わずに 愛の終りを知らされた”(『愛の終り』より、作詞:松崎由治)

その愛が天に送られるような、明るい終末感。「こしつじが」と発音が聴こえるのがツボ……。子羊はだれか。一人称や二人称が出てこない作詞が神から目線。神々しさの秘訣です。

“愛をきざんだ糸も結べず ふるえてる なにがこんなに なにがこんなに くるわせる”(『愛の終り』より、作詞:松崎由治)

なにがこんなに……とつらねて嘆きのままに霧散していく無念、無情。狂う、は不安定な心情でしょうか。個はうごめく集団の潮流にほんろうされて、押し流されていきます。あー……というコーラスとともに召されて行く。

青沼詩郎

参考Wikipedia>愛の終り

参考歌詞サイト 歌ネット>愛の終り

『愛の終り』を収録したザ・テンプターズのアルバム『ザ・テンプターズ・イン・メンフィス』(1969)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『愛の終り(ザ・テンプターズの曲)ピアノ弾き語りとハーモニカ』)