憧れのラジオ・ガール 南佳孝 曲の名義、発表の概要
作詞:松本隆、作曲:南佳孝、編曲:坂本龍一。南佳孝のシングル、アルバム『MONTAGE』(1980)に収録。
南佳孝 憧れのラジオ・ガール(アルバム『MONTAGE』収録)を聴く
ロネッツの『Be My Baby』を思わせるリズム・パターン来ました。私はこの曲が好きなので共通点を感じるとなんでもかんでも結びつけてしまいます。でも南さんやそれに関わる音楽制作チームであらば、『Be My Baby』オマージュでしょ? と問い詰めれば「それもある!」と応えてくれそうな気もします。
ロネッツはキックとスネアの轟く壮大な残響感が持ち味ですが、南さんの『憧れのラジオ・ガール』のドラムトラックはスネアがアクセントしてバツっと残響がタイトにおさまります。サウンドがブワつくのを避ける意図の音作りかもしれません。エレクトリックベースが不在で、シンセ・ベースがその音域や役割を担います。
「ピュゥーーン……」というラジオのチューニングを思わせるシンセっぽい純音(?)がポルタメントして漂います。あなたの局を探してさまようボク……的な演出でしょうか。
人間らしさを希釈したような機械チックなボーカルが込められています。編曲者でもある坂本龍一さんが担当するボコーダーが入っているようです。最後のほうの歌詞“胸のシンバル……”のあたりなど、南さんのリードボーカルが抜けてボコーダーだけが歌詞を唱える場面もあるほどに楽曲の印象を大きく占めます。
ラジオというデンパなモチーフを取り入れた楽曲であるのを汲んだ意匠か、こうしたボコーダーやシンセなど人間や生楽器のフィジカル由来の音の先を行く文明を感じさせる要素が入り、曲に独特のわくわくするにぎやかなフィールを与えています。
エンディングのオケ・バンドのカットアウトがまさか。思わず心の中で「ウソやん……」と嘆きました。曲中にかいま見えた単純なポルタメント音よりも音色を少し派手目にした感じのチューニングを思わせるポルタメントが亡霊のように着地する先を求め……次の局(……いえ、曲)へと移ろいます。
セルフカバーアルバム『ボクのこころ~Meu Coracao(メウ コラソン)』収録
先にこちらのアレンジで楽曲に親しんだあとにオリジナルリリースのアレンジをちゃんと聴いたので、余計にオリジナルアレンジの方に対して「ウソやん?!」の感慨が私の中にとどろきました。こちらはセルフカバーバージョン。オリジナルリリースの1980年の約28年後のセルフカバーです。
ピアノ、ギター、ベース、ドラムス、ラテンパーカス。ミュージシャンらの生楽器の響きを尊重した、いつの時代の私にも優しい耳触りです。間奏のビブラフォン好し、入れ替わるように漂うオルガンのゆらめき好し。
精鋭を率いた音の輪郭に、南さんの歌声の独特の孤独感やブルージーな心持ちの片鱗が共鳴し、小さく夜に輝きます。オリジナルバージョンは日中のラジオ番組、セルフカバーバージョンは夜〜深夜のラジオ番組を想像させ、その差異がまた面白い。
ちなみにセルフカバーバージョンのレコーディングはリオ・デ・ジャネイロで現地ミュージシャンらと行ったそう。音も演奏も抜群に好きです(参考Amazonページ)。
青沼詩郎
参考Wikipedia>MONTAGE (南佳孝のアルバム)
『憧れのラジオ・ガール』を収録した南佳孝のアルバム『MONTAGE』(1980)
『憧れのラジオ・ガール』のセルフカバーを収録したアルバム『ボクのこころ~Meu Coracao(メウ コラソン)』(2008)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『憧れのラジオ・ガール(南佳孝の曲)ギター弾き語り』)