まえがき
傑出アルバム『COBALT HOUR』の結び付近を印象付ける美曲、『雨のステイション』。
雨のステイション 荒井由実 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:荒井由実。荒井由実のアルバム『COBALT HOUR』(1975)に収録。
荒井由実 雨のステイション(アルバム『COBALT HOUR』)を聴く
ふわふわとただようユーミンの歌唱のメロディ。その発声はまっすぐで純朴で輪郭がはっきりしているのにやわらかい。ユーミンの歌は真似したくてもできないのです。ご本人だけが歌えるメロディ、情景があります。それでいて鑑賞者を惹きつける。自分の歌にしたいなと思わせて、近づけて、抱きしめるのだけれど最後の線で私は私、あなたはあなたよと突き放すでもなく肩を持つ。腕1本を伸ばしたくらいの距離でリスナーと正面に向き合って立つ。そういうアティテュードを感じるのが私がユーミンを好きな理由のひとつかもしれません。
コンガのパクンというアタックがマイルドでやわらかい。8分割をハイハットやらライドが出します。コンガも16の分割まじりの8分割を出す。アコギやらなんやらがじゃかじゃか刻まないのが良いのです(自戒)。和声感を出すのはエレクトリックピアノ。コゥ〜ンとやわらかく漂いますが、空間を埋めすぎない。エレキはスチャっと音を止めます。ベースはせりあがる。少し動きをつけて分割のクセ感を出す。しかし埋めない。
オルガンがひゅるんと高鳴る。ゆらめく。つよくうねる。しかし空間があります。頭上を行くひこうき雲かよ。
アルバム『COBALT HOUR』のおしりから2番目。コバルトの時間って、空の色って、どんなだったかな。その結論を出すような、線路のむこうに答えを放り投げて持ち越してしまうような、後ろ髪ひくセンチメンタルを秘めた胸キュンなほろ苦ソングです。6月は端境の季節
青沼詩郎
『雨のステイション』を収録した荒井由実のアルバム『COBALT HOUR』(1975)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】中間色の時間 雨のステイション(荒井由実の曲)ピアノ弾き語り』)