あの娘と暮らせない 矢沢永吉 曲の名義、発表の概要
作詞:西岡恭蔵、作曲:矢沢永吉。矢沢永吉のアルバム『ドアを開けろ』(1977)に収録。
矢沢永吉 あの娘と暮らせない(アルバム『ドアを開けろ』Remastered 2022収録 )を聴く
矢沢永吉さんの作品には西岡恭蔵さんからの提供がいくつかあります。その西岡恭蔵さん自身名義の作品においては、西岡さんの公私のパートナーであるKUROさん作詞で作曲が西岡さんの曲がいくつかあります。
この矢沢さんへの提供曲『あの娘と暮らせない』では西岡さんが作詞の提供。
ぺっきぺきのベースのスラップが印象的です。タイトで耳ざわりがマイルド。抑制がこれほどにとれたスラップに巡りあえるのは耳福というにほかありません。
ドラムもパキパキでスネアのスパンとさばけた甲高いトーンとライドシンバルのかけあわせが印象的です。カップを叩いたりしているでしょうか。轟く幅感もあるのですが鋭いサウンドで、ベースとあいまってタイトな音像を提供します。
ギターが左右に開いていて、右のギターは特にしゅわしゅわとフェイズのエフェクトがかかったニュアンス。矢沢さんのぶっとび感ある鮮烈なキャラクターの演出に加担します。世界中とびまわってそうだもんね。
左のギターのほうがベーシックになじんでいる感じですが、ここぞの瞬間、右のギターと一緒に同調するチョークアップみたいなのを見せる。かけあいと協調のにらめっこです。
ギターがばーんと白玉(音価の長いストローク)を置くと、ブラスセクションが華をちらします。ダブルのユニゾンサウンドの輪郭が驚くほどにキレイです。シンクロぶりがエキセントリック。サックスも色艶をふりまきます。エレキギターとブラスがメリハリを埋め合う編曲が良いですね。セルフプロデュースのアルバムのようで、編曲名義は確認できる材料が安易なネット検索ではあまりヒットしませんが矢沢さん自身かもしれません。
no no no……などフェイク、シャウトを交えて自由に、アクティブにとびまわるボーカル。バンドを従えるマスターの様相です。なんかもうキマっているんですよね。ボーカルが出ていなくてバンドだけが鳴っている瞬間でも、すべてをひっくるめてYAZAWAになっているんです。惚れ惚れしますね。
矢沢さんがゼニがどうのとか働きな!とか歌うのは特別な響きをまといます。街に数多いる一介のオトウチャンが言っても全然不自然じゃないし、そうしたキャラクターが発するなりのゼニがどうとか労働の話なりの説得感ももちろんそれはそれであると思うのですが、なんというか次元が違う。いえ、もちろんひとつの地球の話であり矢沢永吉というキャラクターも現実のもの。街のオトウチャンと地続きの真実だとは思うんですけど、飛躍がすごいんです。このあたりを言語化するにはもっと聴き込まないとかな。
青沼詩郎
『あの娘と暮らせない』を収録した矢沢永吉のアルバム『ドアを開けろ』(1977)
OPEN YOUR HEART
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『あの娘と暮らせない(矢沢永吉の曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)