Back in the U.S.S.R. The Beatles 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Lennon-McCartney。The Beatlesのアルバム『The Beatles』(1968)に収録。

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耳が忙しい。聴きどころが多いです。物議のアルバムの1曲目がコレ。ヤバいな……

なんたってドラムがリンゴじゃなくてポールだそうです。闊達なようにも思えるし、荒っぽくまっしぐらなようにも思えます。ヴァースでも繰り返すときにはドラムパターンがちょっと変わったり、「純・ドラマー」っぽくなく、気分屋の歌い手が叩いたドラムのように自由で衝動に素直でツッパネの強いドラムが魅惑です。Wikipediaに書かれたクレジットなど見るにジョージもジョンもドラムをやった風なクレジットがあります。独特の轟音、輪郭のある種のブレはそうした複数のメンバーのドラムがオーバーダビングされた形跡を示しているのでしょうか。

左側のベースが歪んでいて凶悪。ブリブリとした音色、ガスガスとしたアタック・ピックで弾いているのでしょうか。ポールっぽくない……と思ったらこれはジョンの演奏? 6弦ベースだとか?

右側にエレキギターの鋭くピーキーな音色。オクターブユニゾンみたいな感じで独特のオブリが入っているのはベーシックとは別のトラックのベースが追加で入っているのか。演奏時間2分ちょうどを過ぎるあたりからの猛烈なエレキギターのトレモロピッキングはジェットエンジンが雲を吸い込んで八つ裂きにしているみたいに猛烈です。

8ビートを叩きまくるピアノの悪童ぶりはドラムと徒党を組んで大陸の空にのしかかります。

低域から「Ooh」……というファルセットボイスで波の上をすべるような高域まで、レンジが広くて語彙の豊かなコーラスワークはビーチボーイズを思わせるし実際にビーチボーイズメンバーの助言のもとに生まれたアイディアだとか。

ソ連に帰ってきた興奮が詰まっています。ジモトにはウクライナ・ガールにモスクワ・ガールが僕を寝かしちゃくれないぜ(私の妄想)、心にはグルジア(なのかアメリカのジョージアなのか)……名曲の暗喩なのかとにかくサウンドの一部に溶けた歌詞も洒落っ気も忙しい。ジェット機で大陸を海を横断する暗躍者の歌は世界の人気者でいることに疲れてもいるビートルズのBack sideのあらわれでしょうか。それがこんなにも雄弁なロックンロールになってしまう。これポールに、ビートルズに作らせてしまう世界もどうかしている。

この曲の収録に不在だからこそかえってリンゴの存在が私の頭に強く浮かびます。リンゴに帰って来いよって言っているようにも聴こえる曲。君は君が思う以上の幸運者だぜ!ってはしゃいでいる。勝手にそんな気分になって聴いている私がいます。この曲の収録時の実際のメンバーたちの心理状態がどんなものかは、私がこじつけるのと全然違うかもしれませんが……末端の鑑賞者の私が長い時間を経て自由に味わうからこそ、そんな「帰って来いよ」的な歓迎の意向を見出す自由な快活さに溢れています。

飛行機の轟音のサンプルがひんぱんにイカれてしまったバンドのかたわらを通り過ぎます。ビートルズの周りをあれこれが経過していくし、私たちもまたビートルズの残したたくさんのエポックのかたわらを通過して海のむこうの大陸を、あるいは故郷を望むのです。美しくも交雑した世界よ。

青沼詩郎

参考Wikipedia>バック・イン・ザ・U.S.S.R.

参考歌詞サイト KKBOX>バック・イン・ザ・U.S.S.R.

The Beatles ユニバーサルミュージックサイトへのリンク

『Back in the U.S.S.R.』を収録したThe Beatlesのアルバム『The Beatles』(1968)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Back in the U.S.S.R.(The Beatlesの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)