手詰まりの反転

3人できっかりいっぺんに演奏できる確かでシンプルなアレンジでありながら、録音物としてはドラムやギターのトラックが複数になっていて(厳密には、そもそものアレンジとして複数のパートに分かれているという意味ではなく、複数のマイクやラインなどの同時収録がなされているであろうと推察する、の意味)、定位感やステレオ感の演出が鮮やかです。

ドラムに華があり、ピッチの高いタム、高いテンションで抜けたスネアをふんだんに交えて手数とスピード感で魅せます。シンバルやタムひとつひとつに定位づけがなされていてワイドです。

間奏もリードギターをオーバーダブするでもなく、「食い」のリズムで緩急(起伏)をつけて押し通します。定位はワイドですがドライで音像が明瞭でタイトです。ボーカルメロディがダイアトニックスケールに素直でメロディアス、前後のつながりのよい順次進行や、3度、せいぜい5度くらいまでのコンパクトな跳躍でつむぐメロディが審美的です。

歌詞が結構病んでいて、タイトルも身動きできない重度の負傷者を意味するもの。明るく勢いをもってドン詰まりの闇を反転させる爽快さが本曲の魅力です。

Basket Case Green Day 曲の名義、発表の概要

【曲について】 作詞:Billie Joe Armstrong、作曲:Green Day(Billie Joe Armstrong、Frank Edwin Wright III、Michael Ryan Prichard)。Grenn Dayのシングル、アルバム『Dookie』(1994)に収録。

Green Day Basket Case(アルバム『Dookie』収録)を聴く

ズボン!と飛び出す立体感と輪郭のまとまりを兼ね備えたエレキギターのサウンド。グリーンデイのギターサウンドを理想だと語る私の音楽仲間もいるくらいです。レスポールを弾いてこういうスタイルのバンドの音楽を湯水のように聴いていた自分の高校生時代を思い出します。

ビリーのボーカルの英語の質感に個性を感じたのが今回聴き直しての気づきです。ちょっと大袈裟に言いすぎるのをご容赦願えば、たとえばイントロの歌い出しなど、「ドゥーユゥハバッダイ……」とカタカナで表現したくなるインパクトがあります。あれ?もしかしてオーストラリアとかあるいはドイツ語圏とか出身だったりする?と思って検索しましたがアメリカのカリフォルニア・オークランド出身とのことです。話者の出身地域による英語の質感の違いに明るくないのでわかりませんが、カリフォルニアとかオークランドとかの話し方には特徴があるのかもしれません。

ドラムのダイナミクスのコントロールがすごいです。イントロ付近からバンドインまでのクローズドハイハットの繊細さ、バンドイン後のスネアやタムのオルタネイトストロークの粒の揃い方などコントロールが卓越しています。

ベースやギターはピッタリと8分割のストロークが息があっていて渾然一体となってもいますが、べらんべらんと時折浮き足立つ、音色が裏返るもんどり打った荒々しさも感じるベースプレイ。エンディング付近のギタープレイは根音からすぐ近くの第3音をとりいれてハーモニックなプレイをみせます。曲のほとんどの部分ではパワーコードのプレイ中心でしょうか。ギターの歪みの倍音が映えるプレイスタイルで、高校生時代の自分がこうしたバンドのスタイルにいかになびいたかを思い出します。

Verse、歌い出しの審美性があまりにも優れていて、サビはじまりみたいな魅力の伝わるスピード感とコンパクトさがあります。手も足も出ないならそのまままんまるのカラダでどこまでも転がっていきゃーいいんだよ……と思わせます。音楽は窮地を覆す手法。表現者になることでのみ解決することもあるのです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>バスケット・ケース

参考歌詞サイト Genius>Basket Case

Green Day Web サイトへのリンク

Green Day / グリーン・デイ | Warner Music Japan サイトへのリンク

『Basket Case』を収録したGrenn Dayのアルバム『Dookie』(1994)