僕は恐竜 THE COLLECTORS 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:加藤ひさし。THE COLLECTORSのアルバム『僕はコレクター』(1987)に収録。
THE COLLECTORS 僕は恐竜(僕はコレクター(2016 REMIXED RECORDING)収録)を聴く
加藤ひさしさんのボーカルのアクロバティックさがカリスマ的。音域が極めて広いです。太古から現代を渡る恐竜が現存していたら……の仮想を思います。
広い音域と関係がありますが、似た形の音形を、音域をずらしながら反復していくメロディが美しい。メカニカルでもあるのですが、幾何学模様のようでもあり、自然界にしばしば観察される、均整のとれた美しさです。これほどの独創的な美メロは、この点ひとつにおいても特筆に値します。
恐竜をモチーフ、メインのテーマに扱った不器用でぎすぎすした優しさ、自分の適応能力のなさにたいするほろ苦い憐れみ、しかしそれこそが自分の強みなのだという自負、しかしそのアイデンティティと時代の流れは激しく擦れて熱を起こしかけているのですが……自分がその緩衝材となることで大事な存在を守り、未来へつなごうとするような……そんな献身的でロマンティックなアティテュードも感じます。モチーフ選びや比喩からして抜群の感性です。『僕は恐竜』。もうタイトルからして金賞です。余談ですが、私のフェイバリットソング、the pillowsの『ストレンジ カメレオン』を思い出させもする、どこか不器用でせつなく、それでいて普遍でスケールの大きな潔さ・爽やかさを覚えます。
『僕は恐竜』の話に戻ります。こんこんと生命の躍動を讃辞するような木琴。ストリングスの刻みも帯同するでしょうか。チェロあたりの音域のストリングスが保続する音。ドコドコとドラムスの低い響きの深さ。アコギの音色も乾き、引き締まり、幾星霜の時空を超えたようなサウンドです。種々の生楽器の響きが、不器用な優しさを彩り、讃辞をそれぞれに述べます。
2016年にロンドンでリミックス・マスターされたようです(参考タワーレコードオンラインサイト)、音が抜群に良い。曲の主題、描くべきことが生命あふれんばかりに聴き手に伝わってきます。
遺物のような不器用な優しさを持ち続けることへの誇りを思わせる傑作です。
青沼詩郎
『僕は恐竜』を収録したTHE COLLECTORSのアルバム『僕はコレクター』(オリジナル発売年:1987)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『僕は恐竜(THE COLLECTORSの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)