Bubble Gum World 1910 Fruit Gum Company 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Floyd Marcus。1910 Fruit Gum Companyのアルバム『Simon Says』(1968)に収録。『フルーツガム・カンパニーのテーマ/バブルガム・ワールド』(1971)というシングルがあるようですが日本限定シングルなのかもしれません。
1910 Fruit Gum Company Bubble Gum Worldを聴く
ティーンズ向けの大衆音楽をバブルガムポップと呼ぶ傾向があるようです。ジャンルの名前ですね。その筆頭が1910フルーツガム・カンパニーでしょう。
そしてめっちゃサザエさん。日本で育ちサザエさんがテレビから流れる風景を知覚する私にとって1910フルーツガム・カンパニーとサザエさんの連想を断つのは困難です。その必要もないでしょう。
サザエさんの音楽をまず刷り込み済みなわけです、私という人間のアイデンティティに。少年期にサザエさんのアニメにふれながら、いつしか大人になった私は音楽の文脈について調べ、その元をたどり、数多の音楽に触れ、鑑賞するのが大好きになります(遅い?)。
どうやらサザエさんのアノ音楽には、参考にする元ネタがあるらしいと知るわけです。元ネタを参照して自分の音楽に遺伝子を発露させてしまう天才が筒美京平さんです。
両方を聴き比べると、明らかにわかる。模倣するときは、ちゃんと誰が聴いてもわかる精度で模倣するのが吉だと思わせます。テキトウで杜撰な模倣をするくらいなら、「これは誰のものも参考にしていない真の私のオリジナルだ!」と言い放っておくほうがまだいくぶんましなような……?(どうでもいい話)
あらためて『バブルガム・ワールド』を聴く。
ピアノと、エレキベースとエレキギターがくだんのイントロのリフレインをユニゾンします。単純な繰り返しを基調に構成されたリフなのですが、16分割のリズム「タタータ」を基調にしていて、リズムとテンポがブレないように、かつ躍動するグルーヴを醸して演奏しようとすると案外トリッキーで難しいです。難しいというほどでもないですがよく練習してバンドで息をあわせる必要がありそう。あるいはバンドで音を合わせることによって集合的なグルーヴが生まれ、多少の個別のパートのリズムのアラが味に変わるような魔法のリフだとも思います。
実際、1910フルーツガム・カンパニーのオリジナルを聴くに、けっこう演奏のノリはラフ。流鏑馬の達人みたいな緻密さというよりは、同じ船に乗って揺られている乗客が思い思いにそれぞれに好きなことをして過ごしているみたいな「ゆとり」感のあるグルーヴです。
マラカスの類がチキチキと鋭い16ビートを出します。スネアのオルタネイトストロークのパターンが案外ラフ。キックは入っているのかわからないくらい、ドラムの低音は出ていないように感じます。ベースも16の分割でリズムを刻みますがやっぱりこう、なんだかリズムのモノサシの目盛りを手書きしたみたいなカチっとしすぎないユルい気持ちよさ・心地があります。
スネアのウェットな響きがいいですね。口にくわえた指をすっぽ抜くような「ポン!」という破裂音をスネアのキメにかぶせます。泡(バブル)がはじける(ポップ)印象をもたらします。
歌詞が案外ちくっと刺すようなトガりがあるみたいです。あんたそんな若いままじゃないんだぜ。いいかげん気づけよ。みたいな?(だいぶ超訳)。BメロみたいなところでコードがⅤmになって響きの安定感に揺さぶりをかけます。ただ音楽の享楽のぬるま湯に浸ってる場合じゃないぜと諭される気分。
泡を刺してはじけさすバンド、1910フルーツガム・カンパニーの泡の飛沫を時代を超越して私がかむります。
青沼詩郎
参考Wikipedia>1910フルーツガム・カンパニー、1910 Fruitgum Company、Simon Says (album)
『Bubble Gum World』を収録した1910 Fruit Gum Companyのアルバム『Simon Says』(1968)