チャンピオン アリス 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:谷村新司、編曲:石川鷹彦。アリスのシングル(1978)、アルバム『ALICE VII』(1979)に収録。

アリス チャンピオンを聴く

エンディングの「ライラライラライラライラライ」の印象があまりにも強いのですが、この場面があらわれるのは1回のみなのです。聴き手に楽曲のなかのある部分を印象付ける手法の基本はリフレイン、あるいは時間的な隔たりを経て再現部分があることだと思うのですが、この「ライラ……」はただ一回のみなのです。そのたぎる汗、血、生還にこぎつける凄まじさが「ライラ……」のシンガロング、絶唱に込められいます。

オープニング付近から、チェンバロだかクラビネットの類と思われる鍵盤古楽器のっぽいサウンドが移勢の要素を盛大に含んだモチーフで印象づけます。

アリス『チャンピオン』より、イントロを印象づける勇ましい器楽モチーフ(折り返しの部分)の採譜例。強拍を空けたり移勢したりとトリッキーなリング上のフットワークを思わせます。

左右には盛大に華やかなアコースティックギターのストラミング。それぞれトラックを分けて2回演奏したニュアンスで、極めてショートタイムのディレイエフェクトやコピペの類でないアコギのオーバーダブがサウンドの基調になっています。

キックの四つ打ちもポイントです。ゴク、ゴク、ゴク、ゴク……心臓の速い速い鼓動を表現するかのようです。興奮状態にあり鼓動は速いのですが、安定してもいる。ベテラン戦士の心理……心身の状態を映しとります。ベースのサウンドも颯爽としたもので、重苦しくなくリングを滑るように足捌きがかろやかです。

ストリングスのオブリガード、16分割のフィルインがこまかく火花が散るように一瞬です。

サビは複数の字ハモが入り、アリスのサウンドのおしるしとしてのハーモニーワーク。

“You’re King of Kings”の一言が天から降ってくるような、心の中から湧き出でるような別次元感。マイクが近い。バンドともリードボーカルとも別の次元からリスナーの耳の注意を一瞬覆い尽くすフックのオブリガード。ドラマーの矢沢透さんによるものだそう。谷村さんのリードボーカルとあわせて、アブラのノリ・照り感がすごい。

谷村さんのリードボーカルはフメンに固定する音程に一瞬リーチさせるかとおもえば、音符の定位置に対してしゃくり上げ、語尾や言葉尻を下げ、上下にスムースにうなりあげます。こうした歌唱の粘りのあるアティテュードが余計、アブラの乗ったアーティスト性を私に強く印象づけます。

正直、私が10代とか20代くらいの頃に認知していた谷村さんあるいはアリスレパートリーの歌のこの独特の粘りの強さは当時の私が思う日常的に聴きたい音楽の質感とは距離があったのであまり積極的に求めることがなかったのですが、近年の私にはこの実演アティテュードの表面のその奥にある本体、ずばり魂のねばっこさがガツンと私にぶつかってくるのです。私も老兵になったということか……

生きて還る場所を目指すのが旅(人生)の後半戦なのかもね。

青沼詩郎

参考Wikipedia>チャンピオン (曲)

参考歌詞サイト 歌ネット>チャンピオン

アリス 公式サイトへのリンク

『チャンピオン』を収録したアリスのアルバム『ALICE VII』(1979)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『チャンピオン(アリスの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)