なぎらけんいちさんを聴いていたら、アングラ・レコード・クラブ(URC)まわりの音楽が私の意識にあがってきました。そうそう、まだまだいい曲で個別に聴いていないのがわんさかあります。
サーカスにはピエロが ザ・ディランⅡ
作詞・作曲:象狂象。ザ・ディランⅡのアルバム『きのうの思い出に別れをつげるんだもの』(1972)に収録。
ザ・ディランⅡ サーカスにはピエロがを聴く
ヘッドホンなどで両耳で聴くと極端な定位。左にがっつりボーカルトラックが寄っています。
ドラムが真ん中。スティールギターのなめらかな音程が漂ってきます。バンジョーがマイルドで奥ゆかしい。右にアディショナルのアコギもいるでしょうか。ベースも右、基本のアコギのストラミングも右。マンドリンのようなトレモロ奏法がぱたぱたお迎えにくるのも右です。
楽器を右に寄せて、リードとハーモニーのボーカルのために左をつかう定位です。現代の大衆音楽とはかけはなれた極端な定位が60〜70年代くらいの音楽には多いです。「極端な定位」を選曲テーマにリスニングパーティとかしてみたいですね。ビートルズのステレオ盤にも極端な定位のものがめちゃくちゃ多いので楽しいと思います。
リードボーカルが大塚まさじさんでしょうか。力の抜き方に儚さただよう、ダイナミクスのある歌唱です。ハーモニーのボーカルパートを聴いていると、西岡恭蔵さんの特徴的な声がいるのがうかがえます。
明瞭でドライな音像のドラムですが、2コーラス目あたりなど要所で、キックにリバーブをかけてスケール感の大きい存在感ある音に仕立て上げている演出意図があるようです。記憶のなかを漂っている気分になります。
シンプルで素朴な印象ですが、ゆったりしたテンポで16分割のリズムを基本にしていて、案外情報量が多いです。さらっと演っているようにみせて、技量と表現力がものをいう曲に思えます。
“ピエロ”は自分の権化でしょうか。主和音に着地しないサビ(コーラス)が延々と続くエンディング。記憶のどこかで、消えない興行の灯りがずっと輪廻している。そんな趣です。
青沼詩郎
『サーカスにはピエロが』を収録したザ・ディランⅡのアルバム『きのうの思い出に別れをつげるんだもの』(1972)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『サーカスにはピエロが(ザ・ディランⅡの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)