DESIRE -情熱- 中森明菜 曲の名義、発表の概要

作詞:阿木燿子、作曲:鈴木キサブロー、編曲:椎名和夫。中森明菜のシングル(1986)、アルバム『CD’87』(1987)に収録。

中森明菜 DESIRE -情熱- を聴く

Get up, Get up, Get up, Get up

Burning love

『DESIRE -情熱-』より、作詞:阿木燿子

千金フレーズ。サビ(?)を頭に持ってきた構成の大勝利です。サビといいますか、サビの結尾の部分なのですね。サビの歌いだし〜前半のフレーズは“まっさかさまに堕ちて desire 炎のように燃えて desire”(『DESIRE -情熱-』より、作詞:阿木燿子)。ここの存在感を圧倒する、ゲラッゲラッゲラッゲラッバーニンラー!この曲で一番に思い出す片鱗ではないでしょうか。

ドラムにゲートがかかって、ズン、デシ‼︎というキック・スネアの輪郭と、面でぶつかってくるズッシリとした硬質な物量感で酔いそうです。

ボーカルに細かく合いの手する、なんだかオリエンタルな雰囲気のチョンチョンとキレの短いシンセっぽいサウンドがアクセントです。ずっとふわーっと和音を白玉(長い音符)で出し空間の虚しさを埋めるシンセもいます。

ギターのカッティングがクリーンでプレーンな音色。アコギでカッティングしたのか、独特の汚れのないサウンドがまたタイト。ドラムのゲート、ギターカッティングのキレ、チョンチョンと短いシンセの合いの手やリズム……音がブワブワしない建材の組み合わせで楽曲全体を構築します。ストイックでカリスマ的な「まっしぐら」感。

中森さんの霧のようにいなくなってしまいそなメロの妖しく艶やかでささやくような歌唱。サビでエンジンを吹かせて対比を強く印象づけます。リードパートももちろんですが、字ハモパートの歌唱が光線銃のように強くてアクティヴです。

独特の、きれの短い各パートの音像がいかにもこの時代の大衆音楽の顔という印象を持ちます。リリース年は1987。大衆音楽とはいえ、中森さんの存在感はメインストリームに背中、あるいは足の裏を向けるような独特の疎外感や抵抗する姿勢があります。哀愁があって、危うくて、ほっとけないのに近づけもしない。楽曲の中の人格がそれを感じさせもするし、そうしたレパートリーの集合が結果として中森さんの歌手像でもあります。音で、歌詞で、演奏や歌唱でそれを印象づけることに大成功した傑作に『DESIRE -情熱-』を挙げて間違いないでしょう。

蛇足ですが、楽曲全体に渡りキレの短いしまりのあるサウンドで走り抜けるのですが、エンディングの1音を決めて曲が終わる瞬間の残響はやや長めで派手目に轟く感じが、些事かもしれませんが私に深い聴後感を与えます。

ショッキング・ブルーの『Venus』をリファレンスしている説

Shocking Blueの傑作『Venus』のコーラスの結尾付近の歌詞に、“I’m your Venus I’m fire, at your desire”(作詞:Robbie van Leeuwen)という部分があります。「アタシがアンタの欲望を燃え上げるヴィーナスだよ!」みたいな感じでしょうか(ヘンな訳で御免)。中森明菜さんの『DESIRE -情熱-』は、その発想・制作の着手あるいはどこかしらのプロセスでShocking Blue『Venus』をリファレンスしているというのが私の仮説です。“desire”というモチーフあるいはテーマを描く態度に、他人の空似にしては出来過ぎな共鳴を覚えるのです。『Venus』『DESIRE -情熱-』いづれも、近寄りがたいのに惹きつけるキャラクターを楽曲のフレーム(枠)の真ん中に据えていると思います。そこが私の音楽愛好心を猛烈に酔狂させます。

青沼詩郎

参考Wikipedia>中森明菜 DESIRE -情熱-

参考歌詞サイト 歌ネット>DESIRE -情熱-

中森明菜 OFFICIAL WEBSITEへのリンク

『DESIRE -情熱-』を収録した中森明菜のアルバム『CD’87』(1987)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『DESIRE -情熱- (中森明菜の曲) ギター弾き語り』)