From Me to You The Beatles 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Lennon-McCartney。The Beatlesのシングル(1963)。
The Beatles From Me to You(The Beatles 1962-1966 (The Red Album)収録 Mono Version)を聴く
大衆音楽とはこれだよと。お手本だし鑑だし永遠のベストです。素晴らしい。何一つ文句のつけどころがありません。この1曲だけ心に持って墓に入れます。
この曲で歌われるYouは確かに主人公の恋人かもしれませんが、ファンや聴衆を大いに意識して作られた意匠に思えます。サービス精神全開です。擦り寄るのでもなく、ザ・ビートルズとあなたという、目線が同じ地平の上でばっちり合う関係での愛の奉仕です。
ルートと5度の音を、1小節を2分割してベースが点々ととっていきます。ドラムが機嫌よくアクセントを添えていく。ギターのほどよいクランチのサウンドがなお私の腰を浮かせてご機嫌を誘います。
ダブルトラックあるいはユニゾンのリードボーカルの線が強く、かつ文尾付近で分岐してハーモニーになる。上にスコンと抜けていくハーモニーパートの軌跡があざやかで、分岐する瞬間はどっちがリードメロディ(主旋律)と解釈すべきなのか烙印するのを戸惑わせます。もはやその必要はない。全部のサウンドでビートルズなのです。
Cメージャー調と解釈しますがミドル・エイトでⅤmから入ってⅠを経てⅣにつながります。コードネームでいえばGm→C→Fという運びで、つまりミドルエイトの導入はFメージャー調目線でのⅡm→Ⅴ→Ⅰのモーションです。元のCメージャー調にはない音、B♭がGmコードには含まれていますから、ミドル・エイトに入った瞬間、急に視界に暗雲が差したよう。でも安心して大丈夫、すぐに元のヴァースと元の調へのモーションに接続し君を安心させます。必要十分な起伏と緩急が大衆音楽の鑑たる所以です。
ハーモニカが最高に良い味出しています。Cメージャー調ですがGメージャースケールのテンホールズハーモニカを用いれば上手に真似ることができます。
間奏のところでハーモニカの提示が再現されます。気になったのが低域。すごく低い音域でハーモニカのフレーズとユニゾン音形を演じているやつがいます。でもベースが定常のフレーズを放棄してそっちに行ったのでもない。同時に鳴っているのです。ベースをダブリングしたのかな。
ハーモニカのメロディとボーカルスキャットが重なるイントロからして最強。
音楽の振れ幅や豊かさに驚嘆するビートルズレパートリーが豊富に存在しますが、『From Me to You』は初期の彼らのイメージのどまんなかを射抜くレパートリーだと思います。一番好きかもしれん……といいたくなる曲がたくさんある悩ましいThe Beatlesによる、あなたへの愛の奉仕です。
青沼詩郎
参考Wikipedia>ザ・ビートルズ1962年〜1966年、フロム・ミー・トゥ・ユー
The Beatles ユニバーサルミュージックサイトへのリンク
『From Me to You』を収録したベスト、通称“赤盤”『ザ・ビートルズ 1962年~1966年』(オリジナルリリース:1973年)
参考書
ビートルズを聴こう – 公式録音全213曲完全ガイド (中公文庫、2015年)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『From Me to You(The Beatlesの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)