まえがき

「オンリー・ユー」のサビはじまり、「Just Only You」のサビの結びが印象的で決まっています。歌詞の中に「10月」のフレーズを含め夏に幅と余韻を与えます。

ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER 杉山清貴&オメガトライブ 曲の名義、発表の概要

作詞:康珍化、作曲・編曲:林哲司。杉山清貴&オメガトライブのシングル、アルバム『ANOTHER SUMMER』(1985)に収録。

杉山清貴&オメガトライブ ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMERを聴く

杉山清貴さんの甘く清涼な声がせつなく澄み渡ります。

リードシンガーの名前を冠したロックバンドの体裁、を思わせる名義ですが、作詞作曲・編曲には職業作家さんが入っています。こうした制作・サウンドプロダクトの体制は、私には一時代のグループ・サウンズ、あとはビートルズなどと比較・対比する文脈として「会議室で作られたバンド」などと批評されることもあるモンキーズなどを思い出しもします。

そうしたバンドのおいたちやバンドをとりまく環境・条件は、サウンドに表れるとおもうからこんな話を先にのべさせてもらいました。

音がすごくきれいです。

まっすぐなベースはスラップをからめてべらんと裏返り弦がもんどりうつような起伏を随所に与えながらも実にタイトにビートを与えていきます。デシデシっとしたスネアのサウンドが印象的なドラムトラックはスネアの音が使い分けられているようで、要所を強く印象付けるときと、ベーシックを刻むときで異なる音色のスネアが鳴っているように察します。曲の局面によるキックの頻度の使い分けなどが手綱をコントロールできている感じで妙です。定位をワイドにもちいたタム類のフィルインであざやかな光がさすように音の景観に刺激を与えます。

ブッブッブッブッブッ……と恒常的にエイトビートを連ねるのは歪んだ感じのベースなのか、音をごく短く切った歪んだエレキギターの音色なのか判別がつきかねます。エレキギターはコーラスなのか空間系のエフェクトの効いたふわっとした音色でより沿っているのか、ベーシックトラックとしては存在感を抑えている感じで、ギターソロで生々しく艶かしい音像をあらわにします。

ベーシックトラックのふわっとした、リードボーカルをとりまき妖艶に演出する空気感をつかさどるのはエレピ系の音色です。和音のビター・スウィートなおしゃれな印象を大きく左右するのもこうした鍵盤プレイの領域でしょう。

ゲートのかかった感じのリズムトラック、ふわっと空間演出のきいたウワモノ。風通しのよい上空を彩るのはバックグラウンドボーカルやハーモニーのボーカルトラックです。華やかな印象を握り、光や彩りを思わせます。

こうした主たるキャストのうしろのほうに、補佐的にストリングスの音色が鳴っている様子。緻密でツボを得たアレンジメントが光ります。

サビのリードボーカルのメロディは大きな跳躍を含むのだけれど音形の天井だけ取り出すと横方向にもなめらかにつながっていて美メロです。「濡れた素肌 抱きしめ 涙を海に返すのさ」あたりの意匠美をご堪能いただきたく思います。

「オンリー・ユー」の入りと「Just Only You」のくくりでフレームされるサビの意匠美も見ものです。

夏のときめき、きらめきと寂寥が込められたサウンド美。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER

参考歌詞サイト 歌ネット>ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER

杉山清貴: Island afternoon Webサイトへのリンク

『ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER』を収録した杉山清貴&オメガトライブのアルバム『ANOTHER SUMMER』(1985)。ジャケット写真のロケ地はギリシャのミコノス島。別次元の夏に出会えそうなファンタジックな島と海の景観がアルバムの内容への期待を膨らませます。

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】決めフレーズが挟む幅と余韻 ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER(杉山清貴&オメガトライブの曲)ギター弾き語り』)