ニコチンを中毒的に欲するのでなく、たばこの味と薫りのあるひとときを堪能する「たばこのみ」ならばいくらか健全なのかなと想像します。
ゴロワーズを吸ったことがあるかい かまやつひろし 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:かまやつひろし。かまやつひろしのシングル『我が良き友よ』、アルバム『あゝ我が良き友よ』(1975)に収録。
かまやつひろし ゴロワーズを吸ったことがあるかいを聴く
私の筆舌を超えてしまうタワー・オブ・パワーによるバンドとかまやつさんのポエトリーリーディングのような抑制の聴いたボーカルがクールなのなんの。
私はたばこが吸えませんが吸ってみたくなりますね。ゴール地方というフランスの地域があり、「ゴール人の女」というのが“ゴロワーズ”というたばこの名前の意味だそうです。かまやつさん自身もゴロワーズの喫煙歴が実際にあるとのこと。ゴロワーズは“タバコ葉を堆積発酵させた黒煙草と呼ばれるタイプ”(引用、参考Wikipedia>ゴロワーズ)で、香りが強いそうです。なるほど、脳内をフランス、あるいはゴール地方にぶっ飛びさせてくれるような独特で個性的な香りなんだろうなと想像させます。私は喫煙しない人間なので、まるでお酒への妄想と憧れを抱くローティーンのような気持ちで「ゴロワーズ」をとらえてしまいます。
ベースとキックのこまかいのなんのです。16分割で精密にシュレッダーするみたいなグルーヴです。オルガンもキレッキレ。バンドを囲むみたいにぶわーっとせりあがるブラスセクション。ギターは左側にはりっついて……酒場で近寄り難い、孤独なんだけど独特の引力を放つ居着き客みたいな存在感。トリッキーにカッティングします。この刻みはなかなか、このフリーな朗読ふうのボーカルと弾き語りで同時演奏するのは難しそうなギターです。
バックグラウンドボーカルが時空を歪ませる間奏がヴァースに対しての「コーラス」的な存在感。フェイザーやコーラスなどのゆらぎ・うねりを生じるエフェクトなのかあるいは単純に重ねた個別のボーカル同士の音程差が生じる効果か判じかねますが、シュワシュワ感があり人智を超えた感覚の演出を思わせます。ゴロワーズでトリップした感覚の表現でしょうか。
たばこがカラダに効いてくる感覚というのがどういうものか私には未知です。恍惚としてくるのでしょうか。お酒についてであれば、良いもの悪いもの美味しいもの様々であるのを私も知っています。きっとたばこも、世界にこんなものがあるのか!と思わせる程に、多様で豊かな嗜好品なのでしょう。
ナポレオンも手を振るし、マリーアントワネットは馬車のうえに立ち上がる。シュールな妄想歴史ハイライトのコラージュ絵みたいです。アートワークを作って、この曲をA面にしてシングルを出してほしいくらいですね。言葉や演奏が想起させる映像の飛躍・幻視と、抑制の効いた演奏・歌唱の対比がクール極まり、煙草の葉がちりちりと燃えて行きます。C’est cool et chaud !
ちなみにゴロワーズは2022年に日本で終売しているそう。フランスに行ったら手に入るのでしょうか。遠い存在になってしまいました。
青沼詩郎
Monsieur Kamayatsu Forever | ムッシュかまやつWEB記念館へのリンク
『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』を収録したかまやつひろしのアルバム『あゝ我が良き友よ』(1975)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『ゴロワーズを吸ったことがあるかい(かまやつひろしの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)