超次元的音価光年
音価デカデカの歌い出しから、音価チマチマのブリッジに突入する緩急がボーカルメロディのリズム面についてのみ控えめに言及しても変態的。バンドのギターなどにみるカウンター(対旋律)などアレンジがメカニカルでロジカル。志村さんの声の生々しい存在感とそうした精密で機械的なバンドのアレンジ、演奏が対立して神秘の火花を散らしています。
間奏明けに、半音ずつずり上がる転調がありますが、ボーカルメロディの前後関係が無段階に連続して進行しているのに突然半音上に無理やり転調するためまるでぶつ切りのフィルムをコラージュしたみたく響きの時空がねじまがり、ボーカルの旋律の前後のつながりはさながら増2度⁈ そんな強制的な転調を一度のみならず二度執行しあなたを銀河へキャトルミューティレーションの刑なり。
ヴァースのまっすぐに伸ばした長い音程に邦楽・民謡のようなふしまわしのひねり・装飾を加えるノンビブブラートの歌声、からの「タッタッタッタラ……」と街を逃げ出す展開が衝撃的です。
アルバムバージョンでエンディングにサッカーアンセムみたいなコーラス(バックグラウンドボーカルトラック)が付加されてさらなる完成の高みをみせています。こんなに目立つ16分割のハイハットを聴ける楽曲も稀でしょう。背骨に直接電気的刺激の鋳造液を流しこまれているみたいな気分です。
銀河 フジファブリック 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:志村正彦。フジファブリックのシングル(2005.2.2)、アルバム『FAB FOX』(2005.11.9)に収録。
フジファブリック 銀河(アルバム『FAB FOX』収録)を聴く
「タッタッタッタラッ」とかもっとミクロに「タッタラ」的なリズムが楽曲を横断してそこここに散らかっているんです。ふたりの逃げ出す、かけていくリズムが楽曲の中心にあり、そんなふたりの疾走感、スピード、バクバクの心臓を意匠するかのように速いテンポで星が左右を後方に流れていきます。
左に寄ったリズムギターもベースも右寄りのオブリガード・カウンターのギターもドラムスも、さらにはブリッジのリードボーカルまでもみんなが16分割のリズムを緻密に重ね合わせます。精密な理屈のデュエル(死闘、真剣勝負)が対等な戦局を長々と引き延ばしているみたいな奇跡的な均衡がバンドのサウンドに身い出せます。
唯一長い音価を引っ張っているのが目立つのはオルガンでしょう。しかしそれも局所的で、タッタラタッタラ……というはずむような、本曲の魂柱たるリズムをオルガンも随所に見せています。間奏でギターソロになるのでオブリガード・カウンターのギターが抜けるときは、鍵盤パートでクラビネット系の音色を右寄りのトラックに加えているようです。補完関係がうまいですね。その際にもうっすらオルガンが背景を支えています。フジファブリックのトガったサウンドやソングライティングに、なくてはならない神の後光という感じがします。
エンディングのwo wo wo wo……というのはバックグラウンドボーカルというか、もう中央定位のリードボーカルがフェイクとしてスポットライトを引いたまま歌っているみたいな扱いだと思い直します。リードボーカルトラックはまるで全身タイツみたくかなりピッタリしたダブリングがほどこされた感じの音像で、局所的に和声音程になりハーモニーしています。街を逃げ出し白い息をはくふたりの存在感に重なります。
UFOの軌道に乗って……というのとUFOに乗るそのままの意味はどうちがうのでしょう。UFOに乗ると表現すれば、そのままの意味で、乗り物としてのUFOの居住空間のなかにすっぽりと収まる印象がしますが、UFOの軌道に乗って、と表現した場合必ずしもUFOのなかにすっぽりおさまって乗っているのではなく、UFOを支配して天板のうえに乗っている(筋斗雲に乗っている孫悟空みたく)ような能動性、優位性、支配権はふたりにあります的な積極的で攻め攻めのスタンスを感じられ、フジファブリックのバンドのカリスマ性を見事に象徴しておもえます。
2000年代はテレビからフジファブリック作品の広告が流れてくるとわくわくした記憶があります。私にとって貴重な同時代の記憶です。
青沼詩郎
『銀河』を収録したフジファブリックのアルバム『FAB FOX』(2005)