まえがき

ロック好きのアンテナを震わせる、表拍を強調した1小節目と裏拍を強調した2小節目を組み合わせたリフレイン。Aメージャーでギターの5弦の開放弦が活きるロックンロール!かと思いきや短3度上にさらっと転調。颯爽としたヴァースはたった4小節で次の構成へ突入。リードボーカルはパワーをギラつかせたかと思えばダイナミクスの機微、声色も豊か。バックグラウンドボーカルのテクスチャも豊かで幅広。ズモズモっとしたサウンドのベースがバンドを引っ張り、パチャっとしたエレキの2拍目裏がアクセント。テシテシしたサウンドのスネアに愛嬌あり。ブリッジというのか、歌詞“Come on”をくりかえすところはEメージャーっぽく、圧巻のリードボーカルとバックグラウンド・サイドのかけあい。楽典や機能和声の手技がありそうな音楽意匠はヒネリと爽やかさを両立し、なおかつパワーと刺激に満ちたパフォーマンスのヴァイブレーションを有します。天才かよ。

Go All the Way Raspberries 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Eric Carmen。Raspberriesのシングル、アルバム『Raspberries』(1972)収録。

Raspberries Go All the Way(アルバム『Raspberries』収録)を聴く

飛んで行けそうなリフがいいですよね。恋慕のポジティブなエネルギーを思わせる快さがあります。

ギターリフのスタッカートのさせかたで躍動が宿るのです。イントロの再現がエンディングに来ますが、ベースの浮き上がるような高揚感がたまりません。ズワ!ズワ!と膨れあがるようなコンプ感はドラムにかかったものなのかギターにかかったものなのか、全体に対してかかったものなのか。音像がモノラルです。道が一本にまとまる渾然一体感があります。

ドラムのスネアのミュートがキツめだという、案外些細なサウンドメイクのツボこそが、このまっしぐらなパワー感を統率する鍵かもしれません。一瞬走りそうになっているくらいの複数メンバーによるバンド演奏の揺らぎがたまりません。

エレキギターの語彙のつなぎの流麗なこと。リードする動きの多さを出したかと思えばバッキングの柵の内にいるまんま上半身を乗り出したのか、といった感じでコントロールが利いています。この人たちの演奏力すごいな。


メージャー中心にフワっとCメージャーにいってはまた”Please”…のフレーズに度々回帰する和声や調の構成力にも目を見張ります。僕が君の元に帰るのは、積極的に行動して世の中をいくら見回しても君の輝きが道標になるからなんだぜ。そんな竹を割ったようなさわやかな思慕から光があふれるみたいな重力があるんです。ブラヴォーだね。

青沼詩郎

参考Wikipedia>Go All the Way (song)Raspberries (album)ラズベリーズ

参考歌詞サイト KKBOX>ゴー・オール・ザ・ウェイ

『Go All the Way』を収録したRaspberriesのアルバム『Raspberries』(1972)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】爽やかパワーの才覚 Go All the Way(Raspberriesの曲)ギター弾き語り』)