モッズの参考
Small FacesのDeccaからImmediateへの移籍後の最初のアルバム収録曲……ということで、Deccaで出ているアルバム名もImmediateで最初に出たアルバム名も彼らのバンド名を冠する『Small Faces』となっていますがセカンドアルバムと解釈て良さそうです。
バンドのギターボーカル、ベーシスト、バンドメンバーでないものがひとり加わったソングライティング名義になっています。スモール・フェイセスのボーカルはおおむねギターボーカルのSteve Marriottが担当しており、彼のエネルギーあふれるエキセントリックな歌唱がスモール・フェイセスのイメージの割合の大部分を占めると思いますが、そんななか、ベースボーカルのRonnie Laneのそっと平静に嘆きをうかべるような歌唱が彼らの作歴のなかに独特で好ましい緩急を与えていて私の耳をひきます。
このスモール・フェイセスやザ・フーはモッズらに人気のあるグループの筆頭だったようです。本曲『Green Circles』はダイアトニックスケールとブルース系のスケールの折衷をはかったような浮遊感あるメロディとハーモニーを輪郭のやさしい(さもすれば危うげな)リードボーカル、ハープシコードの儚げな音像が憂いを嘆きますが怒りの天罰のいかづちみたくさばけたドラムがアクセントを与えます。
スモール・フェイセスの本アルバムを聴くに、音楽性に幅を感じます。Steve Marriottのリードボーカル曲にはThe Whoのような激しい表情も覚えますし、あるいはその豊かな楽曲のタッチからはThe Beatles、The Beach Boysなどにも通ずるアプローチを感じもします。音楽的好奇心の強いグループかもしれないないと、いまになって見直し、その面白さに気づきはじめた私です。たとえばスピッツ、THE COLLECTORS、くるりなどを好む日本のロックバンドのリスナーには特にこのスモール・フェイセスを改めて聴き直しては?とおすすめしたい気分。
私自身のための覚書として補足しておくと、モッズとはおもにイギリスの労働者階級間のサブカルチャーを指し、1950年代にモダン・ジャズ(いわゆるビバップ:マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、デューク・ジョーダン、アート・ブレイキーなどが私の偏見における筆頭か)を演奏した者やその愛好者(ファン・リスナー・オーディエンス)を「モダニスト」と呼んだのを「モッズ」と短縮したことに由来するそう。ビートルズやローリングストーンズの活躍と時代・全盛期が重なるともいいます。
ミリタリー・コートやミリタリー・パーカー、スキニー・タイ、三つボタンスーツ、装飾を伴うスクーター(エンジンが覆われていてお気に入りの服が汚れにくい)、おろした髪などがモッズの特徴として挙げられ、その気質・気風はときにロッカーズ(ポマードでアップした髪、無骨なバイク、ライダースジャケットなどのイメージ……?)と相容れないものがあったようで、衝突事件も実際に起きており、その史実はスタンリー・キューブリックが映画にした『時計じかけのオレンジ』のワンシーンのモチーフにもなっているようです(いわれてみれば観たことある気が)。
Green Circles Small Faces 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Steve Marriott, Ronnie Lane, Michael O’Sullivan。Small Facesのアルバム『Small Faces』(1967)に収録。
Small Faces Green Circles(アルバム『Small Faces (Deluxe Edition )』収録2013Remaster Stereo Version)を聴く
つねにダブリングの音像で、ソフトな発声のロニーのリードボーカルがやはり楽曲の質感の魂柱としてはかなげで魅力です。左のほうにハーモニーがふってあるステレオバージョン。右にリードボーカルが寄っていて、少しヘッドホンで集中して聴くには聴きづらいかもしれません。リードボーカルとハーモニーのボーカルが谷をつくった中央付近にドラムがいて、まるで指揮者のような絶対的な存在感を発揮します。
こんこんと軽くノックするようなハープシコードのサウンドが軽く、ベースのサウンドはチェロなんかも重なっているのかもはや聴き分けが私には困難ですが低音域が分厚く、ハーモニーやソフトな歌唱の質感のリードボーカルと補完関係のような相性の良さをみせます。
演奏時間2分に突入したあたりから、もともとのマスターテープの状態が悪いのか、ステレオバージョンだとぐらんぐらんと薬物のハイが切れたあとの気分不良(やったことないので想像です)になったみたく、左右の定位の音像がゆらぎ、崩れ、乱れます。モノラルバージョンのほうがこのマスターのキズに由来する? 障害が、まだましな気分で聴ける気がします。ガビっと唐突に音量が落ちてしまう乱れへの対処はステレオ版の方がはかられている感じもします。
総合的には、左右からのバランスが安定して(というかそもそも左右がない)演奏のエネルギーがボン!とぶつかってくるモノラル版のほうが私には気持ちがいいです。マスターのキズ(?未確認)が惜しいですが、曲として好きですし聴く価値を感じます。
モノラル版のリンク↓
グリーン・サークルが謎
グリーン・サークルがなんの比喩なのかが私にはわかりません。歌詞が非常に抽象的で観念的におもえます。ふわふわとした楽曲のサウンドがその性格を意匠しており、サウンドと歌詞の内容が一致していると思えます。その何をいいたいかがわからない、どうとでもとれるし、どうとでもとってもらって良いという態度が神がかっていて、私を妙に惹きつけるのです。緑の円環……なんなんでしょう。畑に一夜にして突如あらわれるミステリー・サークルのこと? あるいは、調和した人の輪、平和や穏やかな関係の永続のこと? あるいはサイケデリック・ロック的な文脈で、薬物がもたらす快楽だったりするのでしょうか。
この楽曲についての言説は、ネット上に無いとはいいませんが数的には少ないです。楽曲のニュアンスを解釈した評論なんかも、私の安易な検索では出会えませんでした。そんなわからなさも含めて、引き続き私をサスペンドしてしまうのです。
青沼詩郎
参考Wikipedia>Green Circles、スモール・フェイセス、モッズ
The official The Small Faces websiteへのリンク
『Green Circles』を収録した『Small Faces』(オリジナル発売年:1967)。2025年1月に再発が出ているようです。配信で聴ける(この記事の執筆時:2026年2月時点)2013 Remasterのものとはまたマスタリングが違うのかもしれません(未確認)。
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Green Circles(Small Facesの曲)モッズの参考【ギター弾き語り・寸評つき】』)