短い命と労い
チト河内さんとクニ河内さんのご兄弟が所属した、キーボードを中心にした編成が特色のグループサウンズ・バンド:ザ・ハプニングス・フォーが北海道出身の歌手:伊東きよ子さんのバックバンドを務めました。ジャッキー吉川とブルー・コメッツと美空ひばりさんなど、グループ・サウンズのバンドが歌手を囲む編成も世には例があるのを思い出します。
『花と小父さん』はピアノが目立つメランコリックなサウンドとスウィングしたフィールのかけあわせ、軽やかな歌唱が特長です。編曲は中村五郎さん。
短いモチーフ(音形)を丁寧に反復する平易な音形が歌い手を選ばない普遍性があります。後から作詞作曲者が浜口庫之助さんだと気づきました。彼の作風にうかがえる傾向の際たる特長は平易さにあります。
花と小父さん 伊東きよ子とザ・ハプニングス・フォー 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:浜口庫之助。伊東きよ子&ザ・ハプニングス・フォーのシングル(1967)、アルバム『O Ganso(花のマドンナ)』(1968)に収録。
伊東きよ子とザ・ハプニングス・フォー 花と小父さん(アルバム『O Ganso(花のマドンナ)』収録)を聴く
かろやかなバンドサウンドがオシャン。ほとんどジャズじゃないか!と私に思わせるのはドラムスの演奏がブラシだからです。コーテッドのスネアをシャアシャアこする音がするGSは初めて聴きました。音色、タッチのコントロールが抜群なドラミングです。
右にドラムと、シャー、チャッ!とかろやかなエレキもいます。左にはポール・マッカートニーの弾くみたいな軽いサウンドのベース、そしてミヤビなフィーリングのアコースティックピアノです。
伊東きよ子さんのリードボーカルは暖かく質量のある声色。レコーディング当日、少し鼻がつまっていたのかな?と思わせる若干鼻声に聴こえる質感ですが許容範囲でしょう。終始かるく歌っていて、花の命のはかなさを絶望するでもなく諦観している感じが出ていて好印象です。
ベース・ドラム・エレキ・ピアノ・リードボーカルと、5人で成立する編曲がきれいです。編曲者名義は中村五郎さん。
花が小父さんに、私をあなたの部屋に連れていって、なぐさめてあげると語りかけ、おじさんはその花のいうとおりにつれてかえり、短い命を看取るという、プロットだけ粗く取り出してしまうと至ってシンプルな内容の歌詞になっています。ですがサウンドも、バンドメンバーの人数きっかりで再現できるコンパクトなものになっており、歌唱のタッチも軽い。悲観するでもない大袈裟でもない軽さが妙味なのです。小父さんも花も、自分たちの儚さを悟っているみたい。
青沼詩郎
参考Wikipedia>ザ・ハプニングス・フォー、伊東きよ子、浜口庫之助
『花と小父さん』を収録した伊東きよ子&ザ・ハプニングス・フォーのアルバム『O Ganso(オー・ガンソ:花のマドンナ)』(1968)