花と空に・・・・ 西岡たかし 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲：西岡たかし。西岡たかしのアルバム『スープ』（1975）に収録。
西岡たかし 花と空に・・・・ （アルバム『スープ』収録）を聴く
チャラーーーンと絢爛な響き。オートハープで私が思い出すのは五つの赤い風船『遠い世界に』。西岡さんソロ名義の作品としても、ここにくだんのオートハープが出てくるわけですね。私が確認していないだけでほかにもあるのでしょうか。
このオートハープの音の存在感が凄すぎて注意がほとんどそれで覆われてしまいます。人の手指が複数の弦の上を滑る・漂う動きが音から視えて（みえて）くる！
左にほわんと浮遊するような揺らぎのあるエレキギターのサウンド。右寄りにアコギとエレピがいるようです。エレピのサウンドがじんわりとにじみ・ゆらぎを思わせるいずれもさりげない補佐的なアティテュードです。なんならもう１本くらい音数少なくつぶやきをこぼすみたいなアコギか竿物楽器がいるかもしれません。
イントロでハデハデなオートハープも、歌詞のあるところでちょこっと輝きを漏らすみたいに数本の弦をはじいているでしょうか。
ドラムスのサスティンの引き締まったサウンド。演奏が緻密です。キックの入れかたが細かい。ベースも緻密ですがドラムスにややハナを持たせるような内助の功的な態度を感じます。
圧倒的なオートハープの存在感を表面に、確かな演奏のオケトラックを基盤に、ソフトでリッチな質感の西岡さんのボーカルが歌詞の哲学を透かし見せます。大事なところでハーモニー（字ハモ）トラックが現れます。リードボーカルに決して覆い被さることなく、奥行きをなすタイム感が絶妙なハモリです。
アルバム『スープ』収録曲をかいつまんでナナメ聴き（そんな言葉ない）するに、すごくアルバム全体としての出来に好感が湧きます。これ名盤なのでは。収録曲どうしのパワーバランス感なども影響してか、単曲に注目しても好感ですし全体の関係性に目線をやるともっと作品全体が好きになる。アルバムとしてあるべき構成・構築です。
歌詞 やさしさとトゲと涙
“やさしさを求める事で 全てすませているとしたら やさしさの花の中にも トゲや涙も見て欲しい”（『花と空に・・・・』より、作詞：西岡たかし）
やさしさは、人間の良い面の代表要素だとしましょう。その裏面にはそれ以外の要素が数多あります。やさしさの対極や、やさしさ以外の要素がより表面のやさしさを引き立てるのです。他人を傷つけるかもしれない質感：トゲもある。弱っている姿：涙もあるかもしれない。画用紙の白が絵の具の発色をきれい見せるように……載る媒体自体が存在しないことには、きれいな色は定着することすらできないのです。
“大空の青さだって ひとの作ったものじゃァなくて 青空は心の中に 生きつづけて行くものでしょうか”（『花と空に・・・・』より、作詞：西岡たかし）
花もヒトも、太陽のエネルギーを受けてやさしさや涙のマーブル模様を心につちかうのです。はてしない容積の空間があるから、適度な距離で関係を築くことができます。青空こそが、人の多様さが定着する媒体です。青空（空間、スペース）があって、私もあなたもそこに存在できるのです。そんな深い話でもあるし、ありふれた当たり前の表層の話でもあります。
青沼詩郎
『花と空に・・・・ 』を収録した西岡たかしのアルバム『スープ』（1975）
ご寛容ください 拙演（YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『花と空に・・・・（西岡たかしの曲）ウクレレ弾き語りとハーモニカ』）