晴れのち曇り 来生たかお 曲の名義、発表の概要
作詞：来生えつこ、作曲：来生たかお。編曲：高中正義。来生たかおのアルバム『浅い夢』（1976）に収録。
来生たかお 晴れのち曇り（アルバム『浅い夢』収録）を聴く
なんだか筒美京平さん作編曲の、平山三紀さんの曲みたいですね。ペンタトニックの青臭いみずみずしさがイントロから匂います。ピアノの音色もグルーヴィだしベースもドラムもグルーヴィ。エレキギターもごきげんに跳ねます。バンド全体で躍動感を協調して魅せます。この一体感と生身のスリルが筒美京平さん作品のサウンドと私には通じて思える所以です。ピタっととまって、ドラムのリズムだけが少し残って、また竿物鍵盤ものが動き出す。リズムのメリハリが良い。音と音のすきまが良いんです。
でもストリングスが私の後ろ頭に向かってとんでいく。すきまといいつつも薄っぺらいのとはまるで違う風通し。
ミョゥーーンと伸びて、永遠のディレイがかかって次曲『痛手』に曲尻と曲頭がクロスしてつながっていきます。アルバムとしてすばらしいんです。この曲の可愛げが発揮される位置付け。
基本ダブルトラックの来生さんのリードボーカル、飄々と平然としたイメージの彼の歌声ですがこの曲はちょっと自分を笑いつつも街の楽しげな雰囲気に骨の底までは染まることはできなくとも一時的にでもそこに身をおく、通り抜ける自分をそれなりに快く思っているそんな諦観の一歩先にある清涼感があります。ハネたグルーヴが一貫して良いんです。歌もハネます。心のなかでスキップしてるんじゃないかな。食いのリズムに次ぐ食いのリズムよ。
ドラムのタツっとタイトなサウンド。キックのデッドでピタっとしたニュアンス。高橋幸宏さんがクレジットされています。編曲は高中正義さん。サディスッティックミカバンドじゃんよ、何割か……
“青色赤色 色どり映えて 自由自在に鋪道に踊る はじき出された 僕だけ片隅 頬づえついて ひとしきり ためいき ひとしきり ためいき ひとしきり ためいき ばかり”
（『晴れのち曇り』より、作詞：来生えつこ、作曲：来生たかお）
天気を詠んだソングライティングってなんて多いんだろうと思います。無機質な都会の構造物を彩るのは街人が携える傘の花々。そんな花に、水と油の油みたいになじめない主人公。いや、水のほうかな？ 浮かんだ油は油どうし輪を大きくするばかり。僕は次にどの街に流れていくのか。低いほうへとひたすら向かっていつか海へ出ていつのまにか空中を昇って雨になって降り注ぎ都会の人の傘やら肩を濡らす水になる。やっぱり君は水のようだ。
青沼詩郎
『晴れのち曇り』を収録した来生たかおのアルバム『浅い夢』（1976）
ご寛容ください 拙演（YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『晴れのち曇り（来生たかおの曲）ギター弾き語り』）