『20才の恋(平山三紀』に寄せて 若さを謳歌する猪突猛進
曲の主人公はオトコに尽くしているようで、両親には自分自身が尽くされている構図でしょうか。コワイものなしの若さゆえのあやうささえピョンと飛び越えるような挑戦的でアグレッシヴな曲想です。左右に開いて鳴るボンゴやコンガなのかそれ以外のタイコなのか、乾いていて、かなりダブついたようなルーズな音色も含まれて思える太鼓類が呪術的な妖しい魅力を放ちます。退魔のおまじないみたいですね。「パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム」(『スカボロー・フェア』より)……みたいな。
ベースとドラムスの織りなすファンキーでグルーヴィーなシックスティーンビートのテクスチャはもはや筒美京平さん印。ピラリピラリとピアノが警鐘を鳴らし私の注意を引きます。エレキギターのブイブイに照り、アブラの乗った音色の歪んだソロがいぶし銀。
ジミヘンコードみたいなアコギのコードづかい、オルガンの音色、ブラスセクションのエスコート……もろもろのサウンドの細部に至って、不穏で両親の心のうちの不安みたいなものを想像させますがはねっかえりの強いムスメは身内や他者の視線をよそに、猪突猛進にハタチの恋を謳歌します。
20才の恋 平山三紀 曲の名義、発表の概要
作詞:橋本淳、作曲:筒美京平。平山三紀のシングル『フレンズ』B面、アルバム『希望の旅』(1972)に収録。
平山三紀 20才の恋(『平山三紀ベスト・ヒット・アルバム』収録)を聴く
左右のタイコが雄弁すぎてももう他の情報が何も入ってこない……というくらいに私の耳を引きます。もしこのタイコが、ムスメを心配する両親の小言だとしたらももうウルサすぎて大ごとだ……というくらいに雄弁なタイコなのです。これは賞賛です。
左がボンゴで、右がコンガなのかな。特に右トラックの組みタイコ、おそらく高いタイコと低いタイコの組み合わせのうち、低い方のタイコのピッチ感に特徴があります。ストロークと同時に、皮面の手指による圧迫の力加減を変化させてピッチのゆらぎをつくっているのでしょうか。魔性のタイコです。
ヴァースなど、細かく、4拍目裏に引っ掛けてバンドの決めをつくっているんですよ。これが、まるで周りの目などおかまいなし!ハタチの私、これ最強なりと言わんばかりの弾丸娘です。オマエは最強だよ。
メインボーカルがいるときでも前後感のある版ランス感で、奥のほうで、リードギターがカウンターやオブリをいれます。いぶし銀な年長者の影を感じます。ハタチの娘の恋愛対象でしょうか?
ブルブル震えるくらいにアグレッシブなベースのシックスティーンビートに吹き出し、のけぞりそうになる想いです。ドラムのハイハットのニュアンス、全体のオトが自然。ドラムはやっぱりこういう音が私は好きです。すべてのタムやら金物を別々にマイクで録って合わせる音はすべてが明瞭すぎて不自然だから。個人にはヒミツも必要なのです。そんな下着のなかまで見透かすような録り方は下品なしきたりさ。全体のアタシを見てくれよ。そんな挑戦的な気分にさせるイカしたトラックです。
青沼詩郎
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『20才の恋』を収録した『平山三紀ベスト・ヒット・アルバム』(オリジナル発売年:1972)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】若さを謳歌する猪突猛進『20才の恋(平山三紀の曲)』ギター弾き語り』)