吠えろライオンズ 埼玉西武ライオンズ応援歌 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:石川優子。埼玉西武ライオンズ応援歌。成田洋明が歌唱(1996)。球団名が「ライオンズ」となり70周年時、広瀬香美による歌唱の新バージョンと成田洋明が歌唱するオリジナルバージョンを併せて収録したシングルが発売される(2020)。
成田洋明さんの歌唱するオリジナルを聴くなら、現在(この記事の執筆時:2024年)でしたらこの2020年発売のマキシシングルCDを求めるのが公認のアクセスしやすい手段といえそうです。サブスクでマキシシングルが配信されていますが成田さんの歌うオリジナルだけは除外されています。
成田洋明が歌う吠えろライオンズを聴く(LIONS 70thバージョンシングルに収録されたオリジナルバージョン)
純粋なファン心理にジンと来ます。団円の厳かさ、ピュアネスがうごめくように魂でぶつかってきます。石川優子さんが作詞作曲に込めた魂の彫刻です。
成田洋明さんの真っ直ぐな歌唱が良い。サビで本人のものに聴こえるダブリングが効いてきますが、真っ直ぐな歌唱の良さが2倍3倍に増幅されて体温が上昇します。Wikipedia(本文末にリンク)をみると「ライオンズ応援合唱団」というクレジットがなされていますが、成田さんのダブリングというよりサビはみんなで歌う声が重なっているのか、あるいは成田さんのダブリングと合唱団の声両方が重なっているのでしょうか。とにかく、心がまっすぐに重ね合わさった純心な響きを感じます。
ドコドン!とティンパニのアクセントが重心を確かにします。トランペット、そしてフルート・ピッコロの類が合いの手を入れ補完しあうアレンジが堅実で素直です。サビでベースが強拍を強調し、ドラムがマーチングっぽい「タッタカ、タッタカ……」の語彙で獅子魂を引率します。
リードギターのふくよかな残響をまとった輪郭はドームや球場の空間に轟くエアー(空気)の音を収録したみたいな質感で、エレキギターのリードトーンらしい鋭い音色なのですが耳ざわり柔らかい聴き心地で、間奏では主旋律をトレースします。これもまた堅実なアレンジ要素です。
間奏前のチアリーディングが音声で収録されています。最後の「Wooh Yah!」が獅子の気合いめいていて特にニヤリとさせます。これはライオンズ応援合唱団というクレジットに含まれる扱いなのでしょうか。西武ライオンズの球団のチアリーディングをもっぱら担当している、当時の踊りのメンバーたちに実際にレコーディングに参加してもらったのでしょうか。弾ける声量と動きを感じる間奏前のチアです。背景でエレキギターがヒィィンと伸びているのも獅子の咆哮の表現かもしれません。
特定の固有の作品について言及するわけではないのですが、「みんなのもの」をデザインすると、カドがまるくなってつまらないものになってしまうことがあります。つまらないくらいならまだ成功の類であり、ときには気色悪さを感じさせるようなものに出会うことすらないとは言い切れません。
それに対して『吠えろライオンズ』は、うまいこと「みんなのもの」「みんなのうた」になっている。共有物、共通の合言葉、共感を高める知的創造物の創出に大成功して思えます。潔く、快いのです。みんなで苦労して転がり続けてきたからこそカドが丸くなることができた、そこに至れた感慨が抽象的に噴き出た魅力を覚えます。
1番、2番、3番と歌詞が進行するにつれて、試合状況に進行を思わせたり、あるいは1試合1試合の集合によってなされるリーグ戦の進捗を思わせます。Cメージャー調で、群衆が扱いやすいことへの配慮に長けたメロディと歌詞、そこにほろ苦いエモーショナルの波を誘うちょっとした副次調5度の和音が絡みます。
野球にもスポーツニュースもからっきしで疎い私ですが、自分の潜在的な獅子魂を呼び起こされます。普遍にアクセスするための洗練だから、気持ちよくて快く感じるのでしょう。純心です。
青沼詩郎
参考Wikipedia>埼玉西武ライオンズ>主な歴代の球団歌・応援歌
シングル『吠えろライオンズ(LIONS 70th バージョン)』(2020)。広瀬香美によるLIONS 70th バージョン、青炎隊によるFAN MIX、成田洋明によるオリジナルバージョンを併せて収録。
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『吠えろライオンズ(埼玉西武ライオンズ応援歌)ギター弾き語りとハーモニカ』)