Homeward Bound Simon and Garfunkel 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Paul Simon。Simon & Garfunkelのシングル、アルバム『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme』(1966)に収録。

Simon and Garfunkel Homeward Boundを聴く

サイモン・アンド・ガーファンクルの曲ってメロディが頭に残るものが多いです。この曲もつるっとあたまからかけながしてコーラスに入ると「そうだ、この曲聴いたことあるよ」となる。

頭に残るのはメロディが良いからだと一見思うのですが、結局のところ音楽が聴く人に与える印象はあらゆる要素の対比です。旋律(メロディ)、リズム、ハーモニー。これはいわゆる音楽の3大要素として白昼堂々大声で語られるポイントです。音の大きさ。音色。演奏の機微。それらの時間にともなうヨコ・タテのなまめかしくめまぐるしい変化。私の肌に、空気に、耳に鼻に喉にすべてにあたえる刺激が音楽なのです。知覚・体験すべてが、あるいはその刺激が二次的に引き起こす現象すべてが音楽。

『Homeward Bound』の話からはずれてしまいました。スーツケースとギターを引っ張って演奏の旅をしている主人公。この道の先が家ならどんなにいいことか。大好きな人が待っている家ならね。

それをしたいなら、演奏の旅など放り出して帰ればいいのです。でもそれをしない。やはり主人公にとって旅は目的。あるいは目的を果たすためにこの旅は必ず通る道なのです。

ぽろりほろり・ぱらぱらと舞い落ちる木の葉かしぐれのように可憐なギターの片鱗から始まる静かな楽曲。リードボーカルのトーンも落ち着き、平静でささやくような優しいニュアンスですが、“Homeward”……と主題にさしかかるとリードボーカルのトーンも輝きを増します。

“Home,”と明らかなサビ(コーラス)に突入するとリズムが倍のテンポ(バイテン)のようそうに。ピキピキとピックベースが、そしてギターのストロークがウラに引っ掛けて次の表拍を強調し推力を加えるようなリズムパターンを演じます。ドラムスのキックとスネアのパターンも明らかな「倍」に。右にドラムがいて、左にベースがいて、ギターは左右にそれぞれいるよう。右にはオルガンもほのかに薫ってきます。そんな左右のカーテンのあいだから、開演前の客席をのぞくみたいにリードボーカルの光がきざしています(お客さんに主役が覗いているって開演前に気づかれちゃうぜ!)。

ささやくように柔和なヴァースの演奏表現、浮き沈みが連綿とつながる優しいメロディのヴァースの音楽設計・意匠。

そして駆け出し、スピードを増していく列車あるいは離陸する飛行機のようなコーラスの解放的な性格。明らかに打点の密度を増し、リフレインを強調するコーラスの音楽設計・意匠。

サイモン・アンド・ガーファンクルの楽曲が記憶に残るのは、音楽を構成するあらゆる要素の対比、豊かな様相の有機的な変化に富む、そういった点で秀でているからだと察します。彼らのほかの傑作たちを鑑賞しても、きっとこれに通底する印象を抱けるんじゃないかな。あるいは聴き手側のこちらも生き物ですから、聴く度に、また曲によって全然違った印象を受けるのもさもありなん。命を円盤やら演奏空間やらに封じ込めるのです。

目的地に向かえば、背中は家に向く。家に向かえば、背中は次の目的地に向くのです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>早く家へ帰りたいHomeward Bound (Simon & Garfunkel song)

参考歌詞サイト musixmatch>Homeward Bound

サイモン & ガーファンクル ソニーミュージックサイトへのリンク

『Homeward Bound』を収録したSimon & Garfunkelのアルバム『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme』(1966)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Homeward Bound(Simon and Garfunkelの曲)ギター弾き語り』)