まえがき
なにが人を恋に向けるのか。理由などそこにないのでしょうか。磁石のS極とN極が引き合うのはなぜか。それを論理的に説明するみたいに恋の説明ができたとしても、論理よりも前に二人の恋があるのよとそんな気にさせる天真爛漫なメロディが炸裂します。
ベイ・シティ・ローラーズのカバーのヒットによる印象も、世界におけるこの楽曲のイメージのある割合を占めるかもしれません。ラジオだかテレビだかあるいは他の何かで、ダスティ・スプリングフィールドのオリジナルかベイ・シティ・ローラーズのカバーかどちらかを一度は耳にした人は多いでしょう、どこで知ったか知らないけれどこの曲に聴いた(触れた)ことがあるよという……恋もそんなようなものかもしれません。
Gメージャーで実演するご本家、途中でポンとE♭の和音に飛び込むところ、恋の衝動性を思わせます。恋していなけりゃそんな行動を起こすわけがない!という極端なアクションを人はとりうるのです。ただそこまで逸脱することなく、すぐ元のGメージャーの感覚を取り戻すところが安心してこの曲を聴ける意匠で大衆に優しくもあります。
I Only Want to Be with You Dusty Springfield 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Mike Hawker・Ivor Raymonde。Dusty Springfieldのシングル(1963)、アルバム『Stay Awhile / I Only Want to Be with You』(1964)に収録。
Dusty Springfield 二人だけのデート I Only Want to Be with Youを聴く
なんというか、鼻が高そうな堂々とした歌唱です。歌手本人の実際の肉体・骨格としても鼻が高くて鼻腔が深そうな響きですが、もちろん歌唱のニュアンスの比喩としての意味でもなんだか鼻が高そう。恋の甘ったるさに甘えている感じではなく、積極的に勝ち取った行動の結果として恋を謳歌している感じがあります。主人公はアナタの腕の中を勝ち取ったのです。その戦利品として、彼のふかい懐の快適と悦楽を主人公は享受しているに違いない……そんな想像をさせてくれます。
モノラルの音像でしょう。すごく元気がいい。ドラムスのプレイが素晴らしいです。ぐわっとダイナミクスで迫ってきて、出るところで出てくる。グループ・サウンズとかのバンドのなかでも特に演奏がうまいバンドのサウンドにこういったドラムスのプレイを聴くことがあります。あと、筒美京平さん関連の作品なんかのドラムプレイも熱いものが多いので関連づいて思い出すものがあります。
ストリングスの間奏、そこまで高くなる?!というくらいに高い音域を攻めます。バイオリンの指板が足りなくなりそう。1オクターブ下でもよかったのでは? いえ、この天井の突き抜ける高さこそが恋の飛翔性そのものなのでしょう。
ダスティ・スプリングフィールドのパワフルな歌声を、バックグラウンドボーカルのアーっとみずみずしく支え、彩ります。金管楽器がオープニングからじゅわっと肉汁たぎっています。
声や管楽器、擦弦楽器の豊かな響きをペカっと軽くピタっとタイトな音像で引き締めるエレキギターもブラボー。ピアノが天真爛漫に私の視界を横切ります。
恋って素晴らしい。
青沼詩郎
参考歌詞サイト Genius>I Only Want to Be with You
Dusty Springfield Official UK Home | Legendary Music Icon へのリンク
参考サイト まいにちポップス(My Niche Pops)>「二人だけのデート(I Only Want To Be With You)」ダスティ・スプリングフィールド (Dusty Springfield)(1963) 堀克己さんによる音楽ブログサイト。ダスティ・スプリングフィールドのキャリア、この楽曲のチャート成績やカバーなどの影響面と歌詞の内容などをご自身の筆で紹介されています。
『I Only Want to Be with You』を収録したDusty Springfieldのアルバム『Stay Awhile / I Only Want to Be with You』(1964)