I Wanna Be Your Man 彼氏になりたい The Rolling Stones 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Lennon-McCartney。The Rolling Stonesのシングル(1963)。The Beatlesの実演は『With The Beatles』(1963)に収録。
The Rolling Stones I Wanna Be Your Man 彼氏になりたいを聴く
レノン=マッカートニーとしては、ひとにあげるのにちょうどいい捨て曲……は言い過ぎかもしれませんが、ビートルズのキャリアにとってはひときわ重要な曲とまではみなさない存在だったのかもしれません。
ですがこの曲の提供をうけたストーンズのサウンドのぶっとび具合。これがモノラルだよ、と私が唸る熱量。
ごもごもとベースが動きます。ドラムは潰れちゃってなんだかもう正直よくわからない。ラウドに鳴りまくってテープ・コンプレッション的に歪んでいるのかわかりません。収録現場での実際の演奏の音量は、録音物を聴いたときに迫力があるからといって必ずしもバカでかいわけではありません。現場で聴いたらどんな音だったのでしょう。
ルートと、5度の音、あるいはそれを6度に向かって動かしては戻す感じのロックンロールの伴奏の定型のギターが抑制の効いたミックス感。音量を占める割合は控えめだとしても、まっしぐらな8分割のビートの直線的な疾走感が雄弁です。
裂くような鋭いリードギターは動きに緩急があります。ジャジャーンと長めに音を置く。あるいは動いて視線を引きつける。
ボーカルは愚直と言っては失礼かもしれませんが同じ旋律をダブルで。ハーモニーが目立つ感じではないですが、部分的にはハーモニーになっているでしょうか。あまり細かい芸当や精緻な解像度で聴かせる感じではありません。「あまり」というかもう、明らかに威勢の良さ重視のアティテュードでしょう。きみのカレシになりたい……なんてお花畑を舞っているかんじではない。ワリャぁオレのモンじゃー!と胸ぐらつかまんばかりの勢いです。仲良くしたいのかシバき倒したいのかもはやよくわかりません。
ボーカルメロディが、Cの根音が鳴っているときにシ♭(B♭)やレ(D)のあたりをフラつきます。愚直な曲、という印象をもたらすのはビート感や進行や構成自体のシンプルさが前面にあるせいかもしれませんが、ボーカルのメロディのポジショニングにひと工夫ある感じがして、そこが流石レノン=マッカートニーだなぁなんて平熱な気持ちの私が感嘆。
The Beatles I Wanna Be Your Man(2009 Remaster)を聴く
勢いがあってヤンチャです。やはりそういう主題の曲なのでしょう。
右側にがっつり寄せられたボーカルトラック。左にがっつり寄せられつた楽器がたちはだかります。
メンバー複数でシンガロングするヴァース(あるいはリンゴのダブリング?)。本題・本意をストレートにぶつけるだけです。技巧もかけひきも捨て去った世界で俺は君と一緒になりたいんだぜ、と言わんばかりの単刀直入ぶり。コーラスに入ったときのハーモニーは確かなものですが、落ち着いて魅せる・訊かせるジェントルなアティテュードでもない。やはりソワソワしてヤンチャが止まらない衝動的なエネルギーがうずいています。
左に寄せられた楽器隊。ドラムのハイハットの分割が8で速いテンポがなかなか忙しいですしスクエアな8分割というよりはダウンとアップ的なダイナミクスニュアンスあるいはリズム的な揺らぎを感じるドラミングです。味のあるドラムでその味を率直に届ける自己開示性こそが聴かせる技巧なのだと思わせます。
I wanna be your man♪の主題フレーズに追随してギターがカウンター(オブリガード)のモチーフをかますところがこの楽曲のキモという感じがします。
ストーンズのオラつきぶりとはまた違いますが、いずれにしてもハッキリスケベで猪突猛進な楽曲であるのが本懐なのかもしれません。かわせるもんならかわしてみろ!というスピード感。彼氏になれそうかい?
青沼詩郎
参考歌詞サイト AWA>I Wanna Be Your Man
『I Wanna Be Your Man』を収録した『The Rolling Stones Singles Collection: The London Years』(1989)
『I Wanna Be Your Man』を収録した『With The Beatles』(1963)