コンプレックスは原動力?
顔がよかったら。身長が高かったら。収入が多かったら。コンプレックスをさまざまヒトは抱くものです。もっとこうだったらいい。でも、現実はそうじゃない。差異があるのです。
「もっとこうだったらいい」が幻想であることもしばしばなのが私の愚かさです。もっと身長が高かったらとか、収入が多かったらとか、顔がよかったらとか……それを私が望んだとして、それを得ることが私にとっての問題の根本の解決になるのでしょうか。
もちろん、なることもあるでしょう。それならそれで、それを手に入れるための努力が有効なのであれば、その努力をしたらいいわけです。
顔面や身長といった身体のことについては限度があります。良く見せるための努力が微々たる効果を発揮することもあるでしょう。化粧とか、少しでもかかとの高い靴を履くとか、自分の素材を活かして魅力的に映る髪型を保つとか、スタイルが良く見える服を選ぶといったことでしょうか。
でも、その人が自分の人生をいい(好ましい)と思って笑っている様子・表情・挙動にかなう魅力はないのではないかと思います。全部(とまではいえないかもしれないが)、いいわけなのです……
シャ乱Q いいわけ 曲についての名義、発表の概要
作詞・作曲:つんく。シャ乱Qのシングル、アルバム『GOLDEN Q』(1996)に収録。
いいわけを聴く
「ミミーレーシミー」。「ダダンダンダダン!」これです。
なんだか、左トラックに、ドラムの轟音をチョップドサラダ(みじんぎり野菜)みたいにしてずーーーっと貼り付けたみたいにしています。右ではズクズクとず太いギターのエイトビートのダウンストローク。ベースは私の環境で聴くと結構バンドのサウンドにめり込んで癒着していますがオクターブでコードの根音をあがりさがりする同音連打をひたすらくりかえしている様子です。
ボーカルメロディも同音連打が多い。跳躍のさせどころを絞っているのです。はりついた感じのメロディラインです。「いいわけ」じみている?
サウンド的に起伏が少なく、まーっすぐであえて言ってしまいましょう、「愚直」な感じがする、バンドの渾然一体となった轟音が基本のサウンド。この愚直をぶっとばすのが「ダダンダンダダン!」。これです。全部水に流れる気がします。「見ずに流れる」じゃないか……「ダダンダンダダダン!」が鳴ったら、はい、いいわけタイム。あなたのいいわけを発表してください。カメラに向かって一言! 言い終わったら、エンディングの主和音とエレキギターの「ドレミ〜」という合いの手(トップノート)が鳴って、はい着地。
ボーカルが、チョップした轟音が緊張を高めるみたいに愚直に盛り上がり、「ウァ〜」「ぁあ〜!」悪夢にあえぎ、うなされるみたいにフェイクをのせます。ダカダカダカダカ……ドラムスのシックスティーンは時空の枠をはみださんばかり。
ピアノのストロークがまっすぐな感じのビートとメロディに躍動感を添える貴重な存在感です。間奏のワウギターがエッジーでサウンドにビシリとムチを与えます。
大臣、退陣
自分を受け入れるには、やれる努力をいつもやっている、やり切っていることです。
それで、いいわけしないで、おれはおれで、おれのやることをやっている。それでこれなんだ。これで笑って生きるのみだ。俺は楽しいし、充実しているし、幸せだ。そう思えるはずです。そう思えるはずなんだけど、ひょいとあらわれる基本スペックタカシ君に「持っていかれる」と、「なんだよ」「なんだかなぁ」といいわけ大臣登場。なんだよいいわけ大臣って。罷免するぞ。
青沼詩郎
シャ乱Qの『いいわけ』を収録したアルバム『GOLDEN Q』(1996)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『いいわけ(シャ乱Qの曲)ピアノ弾き語り』)