I Love Youからはじめよう 安全地帯 曲の名義、発表の概要

作詞:松井五郎、作曲:玉置浩二。安全地帯のシングル、アルバム『安全地帯VI〜月に濡れたふたり』(1988)に収録。

安全地帯 I Love Youからはじめようを聴く

玉置さんの歌声がはじけており、エネルギーがほとばしります。歌唱の声色が、歪んで倍音が豊かになりサスティンが伸びたエレキギターのリードトーンみたいに感じられるのです。エレキギターの音色をチューンして無限の表現を引き出すのをボーカリストとして歌唱でやっている……そんな技巧と無尽の魂を覚えるのです。

シーラーミーラシーラミー……(in Aメージャー調)。着実ですがちょっと引っ掛けた移勢のリズムや、強拍にぶつけてから和声音に解決する音程が印象的なモチーフをリフレインします。イントロ、1サビ明け、エンディングなどで主題を強調するかのような、この楽曲における魂柱のようなモチーフです。

エンディング前にはBメージャー調に転調していますから、エンディングでは転調後の調で同じリフレインを再現します。エンディングでは右と左にオクターブ違いのリードトーンのエレキギターが現れ、ミュージックチャイムあるいはミュージックボックスのような音色と一緒になって同じモチーフを繰り返します。不器用だからひたむきにならざるをえない人の努力の向こうに希望があるのを示唆するような趣を感じます。

不器用な魂を乗せる器そのものはシンプルな曲だと思います。シーラーミーラシーラミー……のリフレインとボーカル部分の交互が曲の主なパーツ。コード進行はⅠ→Ⅵm→Ⅳ→Ⅱm→Ⅴと、いったいいくつの大衆歌の美しいメロディと魂を乗せたかわからないほどに典型的でシンプルなパターンです。

2サビがおわると主和音から全音、あるいは半音ずつ地平を上げていくそれまでにない展開をはさんで起承転結の「転」の部分っぽい歌詞のない間(ま)をはさみ、シンプルな曲のシンプルな構成がみっちりし過ぎないように聴き心地に刺激をもたらします。

また最後のサビの折り返しで長2度上の調に唐突に突入。これもシンプルなモチーフと構造を基調にした楽曲の聴き味に耐久力と恒常性を与えます。AメージャーキーのⅤにあたるEから新しい調の主和音Bメージャーに直結するので、新しい調のBメージャー目線でいうとⅣ→Ⅰの動きをしたとも解釈できるので、意外性ある味わいとつながりの円滑さの両方を備えて感じます。Ⅳ→Ⅰという動きの深淵さよ。このコード進行だけでも曲が書けてしまいます。

ひとりきり さみしさに

ふるえた夜

叫びたい はげしさに

気がついてた

ほんとうの 自分なら

こわくない

もう一度はじめられる

明日がある

涙のむこうに 輝く瞳に

答えを探して I Love You I Love You

I Love You More

なくさないで 夢を 忘れないで 愛を

心をひらいて I Love You I Love You

I Love You More

『I Love Youからはじめよう』より、作詞:松井五郎

いいたいことは言葉の向こうにある、その主旨をはじめから正直にすべてを見せて紡いでいく……器用な計画や、他人から見える自分のコントロールなどに心を砕けないからこそ全力で正直でいることに心を砕いている、そんな純白さを思わせる歌詞です。

こういうところが、後の玉置さんの楽曲『田園』などに通底する心の態度な気もします。作詞者は松井五郎さん、『田園』の作詞者は玉置浩二さんと須藤晃さんとそれぞれ別なので、私が通ずるものをおおざっぱな解像度で勝手に見出しているだけかもしれませんけれど、無関係だとも思えないのも正直なところです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>I Love Youからはじめよう

参考歌詞サイト 歌ネット>I Love Youからはじめよう

玉置浩二&安全地帯オフィシャルサイトへのリンク

『I Love Youからはじめよう』を収録した安全地帯のアルバム『安全地帯VI〜月に濡れたふたり』(1988)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『I Love Youからはじめよう(安全地帯の曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)