It Never Rains In Southern California カリフォルニアの青い空 Albert Hammond

作詞・作曲:Albert Hammond、Mike Hazlewood。Albert Hammondのシングル、アルバム『It Never Rains in Southern California』(1972)に収録。

Albert Hammond It Never Rains In Southern California カリフォルニアの青い空を聴く

めったなことではカリフォルニアには雨は降らない。それでも滅多に降っちゃったときはその降り方ときたらひどいもの。

この前提をふまえます。

夢をもって、カリフォルニアに出てきた。「青い空」はいい。これは「陽」、プラスの情景です。

でも没落したらひどい。しくじったらひどい。「決して降らない」と言われるカリフォルニアの雨。でも降ったときと、人生の失敗、沈み込みを重ねます。

ハリウッドも含むカリフォルニアという土地。雨が降らないという気候。それと若造の夢。夢を持って出てきたかと思えば、故郷にいまこの瞬間の姿を誇れるか? 故郷に胸を張れる姿で24時間いられているか? といえばぜんぜんそんなことはない。

広大な土地。その土地がもつ意味。そこへ人がやってくる意味。そこにいる個人、主人公。このあたりをフレーミングして、「ぼわん」とではなくきちんとフォーカス(焦点)があるのに、話の向こうにみえるのは「人生の浮き沈み」という荒涼かつ広漠としたかつ誰にでも立ちはだかる普遍のテーマ。この曲はまず、いちばん奥にそびえる本質を射抜く鋭さが素晴らしい。それでいて余韻があります。

イントロや間奏のフルートのオクターブのモチーフ。シンプルですが耳に残ります。

和声はヴァースもコーラスもほとんどⅡm→Ⅴ→Ⅰ(、Ⅵm)。渋いね。

2ヴァース目でボーカルのメロディの音域がぐっと沈み込みます。パンも切らしちゃって栄養不足でへろへろ。もう故郷へ帰りたい。ひどいありさまの落ち込みを、ボーカルメロディの音域的な沈み込みでも表現します。脚韻の踏みっぷりも効果的で気持ちの良いリズムを生み出します。“I wanna go home”で音域を一気にあげて、コーラスの冒頭の単語“It”のところも高くて感情のたかぶりを思わせます。

左右にアコギのストラム。ベースとドラムはシンプルですがシンプルな和声のなかでベースラインがじわじわと浮き上がるようなフレージングをみせるところがいいですね。カツっとしたドラムのサウンドが点をトメていき、開放感あるサウンドの骨格の関節をキメていくようです。ストリングスも必要十分。そして厚いバックグラウンドボーカルが主人公の孤独な青春の夢を大衆の普遍として解き放つかのようです。

ほんとうに降ったらひどいのかな。体験してみたい(しない方が良い?)ですね。カリフォルニアの雨。

青沼詩郎

参考Wikipedia>カリフォルニアの青い空

参考歌詞サイト KKBOX>It Never Rains in Southern California

Albert Hammond 公式サイトへのリンク

『It Never Rains in Southern California』を収録したAlbert Hammondのアルバム『It Never Rains in Southern California』(1972)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『It Never Rains In Southern California(Albert Hammondの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)