嫌んなった 憂歌団 曲の名義、発表の概要
作詞:沖てる夫、作曲:憂歌団。憂歌団のアルバム『憂歌団』(1975)に収録。
憂歌団 嫌んなったを聴く
『おそうじオバチャン』をはじめて聴いたときにも思いました、この圧倒的なリードボーカルの存在感。中性的でもあるのですが性別なんてものを優に(憂に……)凌駕する圧倒的な人類哀歌。芯の響きがぎらつき、カップヌードルのちぢれ麺のように強く細かくゆらめき、マイクロフォンの近くの空気をねじまげるくらいに覆い尽くすこのパワー、温度。暖かさとブルーがケンカしてタコ殴りしあって最後には抱き合ったような混濁したボーカルの凄み。
左のカランと響きの軽い竿物はバンジョーでしょうか。演奏が軽妙でスウィープピッキングのかろやかな撫でっぷりまで克明にそれでいて軽やかに収録されています。リードをとるときもへたに真ん中にアディショナルトラックを追加したりしません。逃げも隠れもしない、バンドメンバー頭数ぶんきっかりの演奏が封じ込められています。
右側にはリズムとコードの脇役(伴奏役)に徹したギターがかるくスコッと2・4拍目を強調します。
ベースのサウンドはプレーンで暖かく。ⅳ#の根音から減3和音の幅で上行していくフレーズ、5度音程(下に4度音程)のウォーキングが歌心豊かにビートを行進させます。
ドラムはパシっと衝突する瞬間に質感があります。ロッドで叩いているのでしょうか。悲哀を覆い尽くそうとせず、あくまで同じ輪の中でともにコップ酒を傾けて新聞紙をケツに敷くような抱擁と共感を示すドラムが渋く暖かいです。曇り空も吹っ飛んでくれよ。
もう駄目さ……とのフレーズを定型にしながらも、クサるのは止めとこうとも連ねる。諦めや嘆きと希望が同居しているのです。これがブルースの本質だよね、と、ふと2025年5月15日(木)放送回のJ-WAVE「THE UNIVERSE」、岸田繁さんが説くブルースの本質についてのあたたかな目線の語りが私のなかでクロスします。
リフレインしておきましょう、諦観と希望の重ね合わせが私にとってのブルーズの特長です。
青沼詩郎
『嫌んなった』を収録した憂歌団のアルバム『憂歌団』(1975)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『嫌んなった(憂歌団の曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)