愛を脅かす魔性
『Jolene』はオリビア・ニュートン・ジョンにカバーされています。『Jolene』を収録した同タイトルのアルバムにはホイットニー・ヒューストンがカバーし映画『ボディガード』の主題歌になった『I Will Always Love You』が収録されています。数多カバーされるご本家がDolly Partonであったことに改めて驚愕するとともに、その印象に残るフレーズ、メロディの存在感に唸ります。
『Jolene』は主人公の愛する人を奪ってしまう脅威たる、魔性のオンナを描いているようです。そいつの名前がジョリーンなのですね。愛する人の名前、すなわち愛の対象の固有名詞を叫ぶ、嘆くポップソングは世に数多あると思いますが、己の愛を脅かす者の名前を連呼する歌は他にぱっと思い浮かぶものがありません。そしてその執拗なほどのリフレイン:ジョリーン、ジョリーン……というのが強く印象に残ります。
リードボーカルを引き立てるのは、可憐で繊細で儚げなバックトラックの特長ゆえかもしれません。ポロポロとメランコリックなナイロン系のギター。金属弦のアコギも入っているようでしょうか。スティールギターのポルタメントも聴こえます。「ジョリーン」の主題フレーズをレスポンスする女声のバックグラウンドボーカルも印象的です。これらバックトラックを構成する要素が儚い。それこそ、ジョリーンに脅かされてしまう繊細な心情の写し身のようです。そしてリードボーカルの強さこそが、脅威の魔性:ジョリーンの権化なのでしょう。ドリー・パートン自身が持つ魔力的な魅力とも重なって思えます。
Jolene Dolly Parton 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Dolly Parton。Dolly Partonのシングル(1973)、アルバム『Jolene』(1974)に収録。
Dolly Parton Jolene(アルバム『Jolene』収録)を聴く
グラマラスでインパクトある風貌のドリー・パートンですが歌声は案外あどけなく感じます。技量がたりないという意味ではなく、声が少女のように若々しく清涼な印象です。そして細かくちぢれるように振幅の短いビブラートがかかります。
右側のギターの伴奏が非常に達者です。情熱的なほどによく動き、メリハリ・緩急がありますがさも簡単そうにこなして思えるほどクールでもあります。
左側にもギタートラックがあります。ポコ、パコ、と耳あたりがマイルドな音色のコンガもいて、右側のギターと対になった定位です。
スティールギターのポルタメントがありますが、バイオリンも左側にいるようでしょうか。
バックグラウンドボーカルのハーモニーが群像になっています。ご本人のオーバーダブなのか、誰かスタジオシンガーを呼んだのか。コーラスのところはリードボーカルを支えるように同じタイミングで字ハモしますが、「ジョリーン」とエンディングで、リードボーカルのいなくなったところで一度だけ主題を反芻するバックグラウンドボーカルの印象が強いです。本当にこれ一度だけ? と思うほど、楽曲のアイデンティティとして強く私の記憶に残ります。ジョリーンに愛するあなたを奪われて、取り残されてしまった迷える子羊の嘆きみたいではありませんか……
情熱的なほどエモーショナルなのに、サウンド全体としてかろやかで、儚い。絶妙なバランスです。エンディングもすぅっと行方をくらますみたいにフェードアウトで収束してしまいます。「ちょっと待ってくれ……」と手を伸ばした瞬間にはもういなくなっているような……焦燥感の残る独特の寂しいフィールが魅力。
青沼詩郎
参考Wikipedia>ジョリーン、Jolene (album)
Dolly Parton | Official Websiteへのリンク
『Jolene』を収録したDolly Partonのアルバム『Jolene』(1974)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】愛を脅かす魔性『Jolene(Dolly Partonの曲)』ギター弾き語り』)