スリー・ドッグ・ナイトの代表作
半音ずつずり上がるリズムの決めに続いて間髪入れずに入る、ソウルフルなしゃがれ声のリードボーカルにパンチがあります。ボーカルの集合、バンドに黒っぽい(ブラックミュージック的)エネルギーを感じます。エレクトリックピアノの音色がじんじんとにじみごきげんです。タシタシ!と気味のよいスネアドラムのサウンドも快調。アコースティックギターのストラミング、エレキギターも入り倍音の豊かさ万全。ガヤっぽい自由なボーカル、シンガロングが人類の輪を思わせます。ドゥ・ワップグループの低音担当みたいな声も箇所により視界をよぎります。
スリー・ドッグ・ナイトはボーカルのダニー・ハットンが中心となり1967年に結成。1968年にシングル『Nobody』デビュー。自作よりも、有名でない作家やミュージシャンの楽曲を発掘して用いる例の多いグループだといいます。
代表曲といっていいであろうこの『Joy to the World』はもともと子供向けのテレビアニメ『The Happy Song』への書き下ろし曲であるも制作中止になり、作曲者のホイト・アクストンがスリー・ドッグ・ナイトのオープニング・アクトを務めた際にメンバーに楽曲の存在が目に留まり、グループに提供する運びとなった、という背景があるといいます。
Joy to the World Three Dog Night 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Hoyt Axton。Three Dog Nightのシングル(1971)、アルバム『Naturally』(1970)に収録。
Three Dog Night Joy to the World(アルバム『Naturally』収録)を聴く
飽和してしまいそうなボーカルシンガロングの圧がすごいです。そしてそこからパコンと抜け出すリードボーカルのフェイクのハイトーンが圧巻。
右にドラムが寄っていますが全体の左右のバランスが良いです。ベースは左に重心が寄って感じます。右に鋭いリズムのエレキ。左に歪み方がいくぶんマイルドなエレキがいて左右に開いて感じます。コーラスのところで、出所を絞ってアコギのストラミングがチャキチャキ。こうしたギター類のリズム・グルーヴ感がすこぶる良いのです。エレキベースの音は耳あたりがまろやかで温かい。
バックグラウンドボーカル含めて、ボーカル群の歌唱力、声のパワーも極めて絶大です。演奏がいい、リズムがいい、音程も質量・テクスチャーもいい……人前に立つバンドとしてごく当たり前のことかもしれませんが、ごく当たり前のスペックが当然のように高いことはそれだけで突き抜けた魅力になることを証明します。すごくいいバンド、すごくいいアルバムです。
歌い出し付近で、人間みたいにふるまうウシガエルのJeremiahを登場させ描写させているのがコミカルでファンタジーで良いですね。なんだか種族問わない地球、喜びの世界として共感の振幅の源の一因かもしれません。日本で童謡として親しまれる『手のひらを太陽に』的な博愛を感じもします。
Hoyt Axton Joy to the World(アルバム『Joy to the World』収録)を聴く
作曲者のボイト・アクストンバージョン。つまり彼のソロ名義の音源ですが、サウンドにはたくさんのボーカルが含まれていて演奏の輪を感じます。こうしたサウンドを誘引する楽曲自体の良さが、アクストンがオープニング・アクトを務めた際にスリー・ドッグ・ナイトのメンバーに伝わったのかしらと想像します。
青沼詩郎
参考Wikipedia>ジョイ・トゥ・ザ・ワールド、ナチュラリー (スリー・ドッグ・ナイトのアルバム)
参考歌詞掲載サイト 世界の民謡・童謡>Three Dog Night『Joy to the World』歌詞と和訳喜びの世界 スリー・ドッグ・ナイト(Three Dog Night)最大のヒット曲 ホイト・アクストンのお母さんも作曲家で、エルヴィス・プレスリーに提供した『Heartbreak Hotel』の共作者でもあるとし、『Joy to the World』の和訳とともに紹介している記事です。
『Joy to the World』を収録したThree Dog Nightのアルバム『Naturally』(1970)
Hoyt Axtonの『Joy to the World』