GS アイラブユー
GS(グループ・サウンズ)が好きでたまりません。
曲がシンプル。楽器をもって、演奏しながら歌うというスタイルがGSの基本なので、楽曲、サウンドがシンプルになりがちです。そこがいいのです。
もちろん、楽器をもったり叩いたりしながら、いかに複雑に奏でながら歌うか、その独創性を競うようになっていく向きもあるでしょう。それによって魅力を発揮するバンドもありますし、GSでくくれそうなバンドの中にだって驚異的な技巧を備え、発揮するグループがもちろんあります。
でもGSにはどこか、ちょっとスキ(隙)があるのがいいのです。
商業音楽が戦後高度経済成長とともに盛んになっていけいけやったれという時勢的な社会の気風とか、フォークとかヒッピーとかロックンロールの興りとかそういうものもろもろも、GSの「コマカイこといいからやったれ」「スタイルさえ踏襲すればサマになるからやったれ」感につながっているのかもとも思います。とにかく、流行ったっぽい(当時を知らないので伝聞と適当)。
歌謡曲の真似事の自演(言葉が悪い)みたいなのもありますね。GS歌謡とかいって。そういうのも私は大好きです。ニオイがプンプンします。
テンプターズかタイガースかスパイダースかみたいな……GS人気の筆頭を挙げるとそんなところでしょうか。バカいえもっとある、あのバンドとあのバンドと……と挙げ始めるようでしたらあなたは心底のGSラヴァーですね。もちろん私ももっとあると思います。
そんな(どんな)GS愛をこじらせたのか暴発させたのかわかりませんが、湯川トーベンさんがプロデュースした『G.S.I LOVE YOU』というGSのカバーアルバムがあります。
これまた脳まで筋肉が詰まっているのじゃないかと思うくらいハードにほとばしる愛でGSを叫び上げた骨までロックな絶頂カバー集になっています。ロックの英傑が集まってGS愛を天に捧げている感じでにんまりしてしまうアルバムです。そんなカバーアルバムの中でもカバーされ愛されている模様の一曲、テンプターズの『神様お願い!』。
神様お願い! 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:松崎由治。ザ・テンプターズのシングル、アルバム『ザ・テンプターズ ファースト・アルバム』(1968)に収録。
ザ・テンプターズ 神様お願い!を聴く
ダカダカドコドコ、ド、ダス、ドド、ダス!!!熱のこもったドラミングの愛おしさよ。浮遊したポジショニングがヘン(褒めてる)なベースがまた愛。和音の根音をアタマできっかりとらないで何をウロウロしとんじゃお前はー!と夜回り先生に諭されそうな不良(善良)ベースが最愛。
がっつり左にベースとエレキギター。エレキギターもチョークアップするオブリっぽいサウンドが目立っていて、和声感なんかほとんど右側のオルガンに任せているかんじです。よく聴くと、帯域をかなり削いだようなリズムギターがたまに奥のほうから申し訳程度にシャランと聴こえる気がします。よくぞここまで削った。
右に嘆きのオルガンと発奮ドラムス、左にサオもの。この様相なので真ん中がスッキリし、あ、あんあんあん……ショーケンさんの悶絶ボーカルが悲哀を投げまくり。ユニゾンして音像があったかくなったり、オブリっぽいボーカルが入ったり。
この、「あ、あんあんあん……」が最高ですね。もう歌詞とかいらないじゃん。これがすべてを物語ってますよ。悶絶なのです。もだえるのです。悩むのです。嘆くのです。悲しむのです。うつむき、物思いにふけり、幾夜をこえるのです。主人公よ、あなたの悲哀が私にはわかる(気がする)。あなたのことなにもしらないけど、その悲哀という人間の尊い思想感情の観念だけはあなたと共有できる気がする!!そういう「あ、ああんあん……」なのです。
湯川トーベンさんらのカバーアルバムの『G.S.I LOVE YOU』でも、いかにこのあんあんあん……を全霊で叫び上げているやら。あんあんあんですよ、もう(崩壊)。
※歌詞サイトの表記は“アー アアアー”。
青沼詩郎
『神様お願い!』を収録したアルバム『ザ・テンプターズ ファースト・アルバム』(オリジナル発売年:1968)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『神様お願い!(ザ・テンプターズの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)