かんがえがあるカンガルー くるり 曲の名義、発表の概要
作詞:鍬本良太郎・丸山もゝ子、作曲:岸田繁。『みんなのうた』(NHK)で放送(2016年2月〜3月)された書き下ろし。くるりの配信シングル(2016年2月3日)。EP『琥珀色の街、上海蟹の朝』(2016年7月6日)、ベストアルバム『くるりの20回転』(2016年9月14日)に収録。
くるり かんがえがあるカンガルー(配信シングル)を聴く
カンガルーがいる かんがえがある
ルルル こんなのある?
しっぽで おえかきかきまくる
ルルル かきまく〜る
ルルル だいちにかきまくる
『かんがえがあるカンガルー』より、作詞:鍬本良太郎・丸山もゝ子
こんな考えがあると提案やイマジネーションが連なります。カンガルーを主人公に、だじゃれじみたというと聞こえが悪いかもしれませんが頭韻と脚韻を意識した“かんがえがある”のワードをつづけます。“カンガルーがいる かんがえがある”の1行程度の歌詞を導いたらもう1曲(のアイディア元)が出来たようなもの。作るのが楽しそうです(もちろん発想から音楽の全容の完成形に至るまでの苦労や労力の総量はとてつもなく大きいものだと思います)。
(中略)しっぽで おえかきかきまくる
(中略)キックで おそらをとびまくる
(中略)ほしを ポケットにいれまくる
(中略)ちきゅうでたまのり のりまくる
と、カンガルーの「かんがえ」のバリエーションで各コーラスが展開。カンガルーの身体の特徴や特長をきっかけに夢を広げます。
と、愛嬌いっぱいの歌詞にひとまず注目を傾けましたが、音の情報量がすごい。
ビヨヨ〜ンと口琴の類。カンガルーのふるさと、オーストラリアの先住民族のアボリジニもこんな口琴を持っているのでしょうか。スライドホイッスルがヒヨヒヨと漂い、カーっとビブラスラップが目を見開くサウンド。打楽器小物がたのしい。
管楽器のアンサンブルもいろどり豊かです。フルートがピシっとほとばしり、ファンファンのトランペットもいるでしょうか。木管金管のサバンナよ。草木の先まで風に揺れてブイブイ云っています。
ベースの動きが幻惑的なほどにトリッキーでアクティブです。1拍を3分割する刻みの細かい目盛りの定規を透かし、軽やかに魔法の指さばきでカンガルーのアイディアの泉のような豊かさを描いていきます。佐藤さん(くるりのベーシスト)、右手やばいって! 左手もやばいです。もはや体のどこの部位がというのを超越してやばい。お空をとびまくるベースです。
岸田さんとオクターブユニゾンするのはファンファンのボーカルでしょうか。あたたかいリードボーカルの声色にみずみずしさが添わるボーカルの層も大地から天を望むような壮麗さがあります。
ブルージーでもありますし、ゆるくスウィングするような、リラックス感と躍動感の塩梅の妙がある独特の曲想が魅力。和声の進行・展開もシンプルさを尊重しながら複雑でもあり、くるり特有の転回形ベースや準固有和音、減音程が響きの移ろいの描き込みを深めます。
ルルル だんだん
ねむくなる…
『かんがえがあるカンガルー』より、作詞:鍬本良太郎・丸山もゝ子
夢やイマジネーションの広がり、思考の跳躍や趣が奔放に活動し、むすびには……今日と明日のあいだに引く線をとびこえるオチがつきます。
青沼詩郎
くるり 公式サイトへのリンク >ディスコグラフィー>かんがえがあるカンガルー
『かんがえがあるカンガルー』を収録したくるりのEP『琥珀色の街、上海蟹の朝』(2016年7月6日)
『かんがえがあるカンガルー』を収録したくるりのベストアルバム『くるりの20回転』(2016年9月14日)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『かんがえがあるカンガルー(くるりの曲)ギター弾き語り』)