昨日に逢いたい The Wild Ones (ザ・ワイルドワンズ) 曲の名義、発表の概要

作詞:万里村ゆき子、作曲:加瀬邦彦。編曲:東海林修。The Wild Onesのシングル、アルバム『YESTERDAY, TODAY AND TOMORROW(ワイルド・ワンズの世界)』(1969)に収録。

The Wild Ones (ザ・ワイルドワンズ) 昨日に逢いたいを聴く

やさしく胸に響かせるメロ、高らかなサビ、メリハリある歌唱。

いれかわりたちかわり多様な楽器が私の注意の表層で忙しくはたらきます。なんと聴きどころの多い編曲、演奏なのでしょう。

デデデシ!とイントロからカミナリが落ちたようなスネアに私の両目から火花。ズゥンと深く沈み込むようなエレキベース。

右のはしっこのほうには古楽器、チェンバロのような音色がいるでしょうか。あるいはほとんど同じ定位にエレキギターのミャンミャンと音域のトリムの効いた音色がいるようで判別しずらい似たキャラクターです。エレキギターは左の端っこにも定位しているようか。右の端にはぴしゃんとはじけるピアノフォルテもいるようか。

右にホルンが、左にフルートがオブリガードで雄大な線を描きます。ストリングスも高音域は左よりな感じにきこえます。

管楽器、弦楽器に幻惑されているとまんなか付近からバックグラウンドボーカルが立ち上がってきます。ああ、耳が忙しい!

全体にコンプレッションが利いて、広いダイナミクスレンジがコンパクトに詰まっていて迫力に富みます。コンプの効きが良いということはやはり元の音、個別の録れ音やステムごとのまとまりやミックス段階全部が良いのだろうなと想像します。プロの録音職人の仕事としては当たり前のことかもしれませんが、あらためてしみじみ思います。

ストリングスのイントロがみずみずしくさわやかです。これを一曲目に采配した勝ち感(価値観)よ。

“いとしい人の その声を かんじてめざめた 夜明けには 忘れた歌を うたうように 忘れたふるさと よみがえる 夕陽のなかで 愛をたしかめ 二人でひとつの 朝をむかえた 昨日に逢いたい お前に逢いたい”(『昨日に逢いたい』より、作詞:万里村ゆき子)

私は『九龍ジェネリックロマンス』(集英社、著:眉月じゅん)という漫画のファンで、ちょうど今アニメーションも放送しています(この記事の執筆時:2025年4月)。劇中でなつかしさについて登場人物が語るシーンがあるのです。

この人こそ!という巡り逢いには、たとえ出逢ったのが近年だったとしても、ずっと昔からの仲だったような、あるいは出逢うのがずっと昔から決まっていたかのようなしっくり感、あるいはゆるやかにいつでもほどける脱力感があるのです。その人との巡り逢いには、ふるさとが関係してくる必然。だって、ふるさとはお互いを構成する重要なバックグラウンドなのですから。相手を知り、理解しようと欲するほどに、お互いのふるさとのストーリーの共有がふたりの結束をより確かなものにするのです。

人生のある時期に出逢ったふたりは、出逢う以前のお互いの過去に干渉することができません。それを指して“昨日に逢いたい”と嘆いているような味わいが、せつなくてさわやかなのです。逢えないのはわかっているからね。だから歌になるんです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ザ・ワイルドワンズ

参考歌詞サイト JOYSOUND>昨日に逢いたい

The Wild Ones (ザ・ワイルドワンズ) 公式サイトへのリンク

『昨日に逢いたい』を収録したザ・ワイルドワンズのアルバム『YESTERDAY, TODAY AND TOMORROW(ワイルド・ワンズの世界)』(1969)

眉月じゅんの漫画『九龍ジェネリックロマンス』(第1巻:2020年〜既刊11巻 ※この記事の執筆時:2025年4月)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『昨日に逢いたい The Wild Ones (ザ・ワイルドワンズ)の曲 ギター弾き語りとハーモニカ』)