北の国へ 高石ともや 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:高石友也。高石ともやのシングル(1968)。『坊や大きくならないで 高石友也フォーク・アルバム第3集』(1969)に収録。

高石ともや 北の国へ(『受験生ブルース 高石友也フォークアルバム第2集(+4)』収録シングル・バージョン)を聴く

右にワイドで派手な鳴りのアコースティックギター。ライン出力したような近くて明瞭な音像です。

ドラムも右に定位していて、リズムギターの力強さを補強します。ザっ!とハイハットの質量感が迫ります。ドラムの音量の中心自体は右に位置しますが残響が左チャンネルにわずかに波及しているような聴き心地があります。他のトラックのマイクへのカブリでしょうか。

左にはピックベース。ボンボンとはずむ音色とピックのアタックがGS(グループ・サウンズ)を思わせる音色です。

ゆらめき、サーフ・ロックかあるいはGSのようなサウンドを思わせるサイドギターが左にいます。嘆くようにオブリガードを添えます。郷へ帰ったときの包まれるような心地を表現したような楽園感のあるエレキの音色です。

ストリングスがスーっとマイルドな糸をシンプルに引き、「ルールー……」と女声コーラスと交互に出どころを棲み分けます。数人で演奏できるバンドのベーシックと、大勢のスタジオ勢のサポートが必要なサウンドが融合しています。個別のトラックのアレンジはシンプルですが豊かな音像が醸成されます。

高石さんのリードボーカルは朗々としています。せつない望郷の想いを歌っていても希望が残る明るく堂々とした響きの歌声が魅力で、絶対的な温かさを感じます。人がらが滲み出る、いえ、ありのままに出る歌唱。私の理想形の一つです。

高石ともや 北の国へ(アルバム『坊や大きくならないで 高石友也フォーク・アルバム第3集』収録)を聴く

別の曲かと思いました。エレキギターの澄んだ深いきれいな音色が印象的です。流れを異にする音楽かもしれませんが、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド『Sunday Morning』のイントロなど思い出させる曲調です。

右にじゃかじゃかしたメインのリズムギターがいる構図はシングル版と通じています。

テンポとグルーヴ感が違うので別の曲のように聴こえるのかもしれません。

エレキギター、ビブラフォンがこんこんと自由きままに戯れるようなセッション・ギグ的な趣もあります。

わざとなのか間違えたのか、ベースの動きが不穏なのが惜しい。

高石さんのリードボーカルはボトムが揺るがない確かさ、安定した質量があります。彼の歌がまんなかにあればすべて納得させられてしまう、それくらいに器の大きさ・存在感があります。太陽のような恒久なエネルギーを感じるのです。

脱線の参考 ヴェルヴェット・アンダーグラウンド『Sunday Morning』

高石さんのそれと年代がまるで違う音楽のような気がしていましたが、1967年のアルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ 』収録で、案外年代は近かったです。チャカチャカとした鉄琴系のかわいい音。ヴォーカルの卒倒してしまいそうな幻想的な深い残響、儚くて私室のベッドで嘆くような歌唱、平熱っぽいバンドの演奏に麻薬的な魅力があります。

後記

京都に長く住んだという高石さん。出身は北海道のようです。ずばりその大地を思った歌でしょうか。わびさびや寂寥ある楽曲と、太陽のようなエネルギーを感じる歌唱の対比が魅力な彼のレパートリーです。

ふるさとに帰るタイミングは、社会の動きのすきまに想いがちでしょう。年末近くなると『北の国へ』が私の胸の中で映えます。

青沼詩郎

参考Wikipedia>高石ともや

参考歌詞サイト JOYSOUND>北の国へ

参考 Discogs>高石友也* – 受験生ブルース / 高石友也フォーク・アルバム第2集 第2回・高石友也リサイタル実況より

ボーナストラックにシングルバージョンの『北の国へ』を収録した『受験生ブルース 高石友也 フォーク・アルバム第2集(+4)~第2回・高石友也リサイタル実況より~』(オリジナル発売年:1968)。2006年の再発CD化のときにボーナストラックが加えられたのでしょうか。

『北の国へ』を収録した『坊や大きくならないで 高石友也フォーク・アルバム第3集』(1969)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『北の国へ(高石ともやの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)