まえがき
千葉県の花見川に落ちた実話はあるそうです(作詞者の糸井重里さん)。 これは何時代?! 現実をベースにしたようでありながらも現代のおとぎ話のよう。ビデオクリップは岩井俊二さん。 1拍を6分割(あるいは4拍をそれぞれ3分割)したようなビートが孤独者が心のなかだけで徒党を組んだようなあたたかさとさびしさがあります。半年あまりの“フジオさん”と主人公の接触の経過を抽出し楽曲のなかで描きます。この楽曲、この唄自体が“フジオさん”へのレクイエムか。遠く離れたものへの思慕を感じます。 ブイブイいうベース。インダストリアル(?)な印象の種々のシンセのユニークなサウンド、的確な生楽器の演奏。コーラスのフレーズ尻で「ビチョビチョ」いうなぞの音色! DからFへの転調で絹をなでるような矢野顕子さんの歌唱も聴き手の意識を転換し風を吹かせます。
ニットキャップマン ムーンライダーズ MOONRIDERS 曲の名義、発表の概要
作詞:糸井重里、作曲:岡田徹。ムーンライダーズのシングル、アルバム『Bizarre Music For You』(1996)に収録。
ムーンライダーズ MOONRIDERS ニットキャップマン(アルバム『Bizarre Music For You』収録)を聴く
(サブスク配信未確認です。円盤をゲットして聴いてみてください!)
伝統音楽なのか、エンターテイメント音楽なのか、反体制・反骨の扇動歌なのか、民謡なのか鼻歌なのか、そのすべてをちゃんぽんにしておきぬけに、お昼ゴハンのあとに、いちにの終りぎわに夕暮れをお共に抽出したコーヒーみたいに私にしみいります。
鈴木さんのニュアンスに富みすぎな歌唱と、“フジオさん“との物語がスっと入ってくる。聴くたびに印象が、注意をひくオトがちがいます。それはもちろん聴きどころに富んでいて、いろんな音が入ってきます。今朝のわたしには、一周まわって、鈴木さんのリードボーカルと歌の物語がすうっと、いえ、じわっと入ってきた。
ダシのきいたかんじのTシャツw。いわんとすることがわかります。何がしみついているんだろう。それはもちろん汗であり、ひょっとしたら、架空の河川:山田川の水や揮発した海かもしれません。それらが日焼けして、ダシになる。顔にきざまれたシワか? 手相か? Tシャツのダシ占い、なんてあってもよさそうなもの。
犬を雑種ドッグと表現。雑種犬ですね。ひっかかりがあるんだけど、うん。雑種ドッグ。そこに足をとられる必要はないけれど、つながれたまま主人を失ったのがこのお犬だとしたら。その未来はどうなるのだろう。
歌詞に女たち……と出てくるところで矢野顕子さんの歌唱もでてくる。そのあと、フゥンとさりげなくバックグラウンドボーカルにも矢野さんがいたりするかな? と一瞬感じました。“フジオさん”、そして主人公の人生と女のカゲ。濃密とまでいえるか知らないが、確かにそこに気配がある。それもTシャツにしみついてヤケついてダシになってんですよね。
青沼詩郎
参考Wikipedia>Bizarre Music For You
MOONRIDERS 公式サイトへのリンク
『ニットキャップマン』を収録したムーンライダーズのアルバム『Bizarre Music For You』(1996)