揺らぐ想い映るボーカル

彼らの代表曲のひとつであろう『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』を最初に収録したアルバム『続 脱・どん底』に収録されている本曲。

ファルセットを局所的に用いてもいて、泣きの情緒から落ち着いた平静なトーンまで多様なニュアンスを含み、小節線を悠然と前後する揺らぎ感に感情の移ろいや機微も映り込むかのようなリードボーカルの歌唱の質感が私の心をつかみます。

ボーカルメロディも審美的で、上行や下行の対照性がところにより見られますし、コード進行もそうした対照性をうまく取り入れているところがあって、たとえばヴァースでⅠ→Ⅵmと運んでいたパターンをⅥm→Ⅰと反対にしてみるなど、同じトニック(ⅠとⅥm)であっても光と陰の印象を使い分けて恋にまつわる感情の起伏を描写しているようで私の心をなおつかみます。

奥田民生さんは昔、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドのことを観ていたといい、奥田さんの曲にも『恋のかけら』という同名曲があります。奥田さんのレパートリーのなかにしばしばみる、ブギウギ調といいますかロックスタイルのかろみある作風の楽曲を考え入れますと、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドが奥田さんに与えたと思える影響は決して小さくないでしょう。

私はもともと奥田さんのファンですが、最近ダウン・ダウン・ブギウギ・バンドの「港のヨーコ……」以外のアルバム収録曲などにもふれていると聴くほどに好きになっています。その水脈はもともと奥田さんと通じるものだったのでしょうね。

こうして活躍している宇崎さんののちの仕事ぶりに、山口百恵さんへの楽曲提供などがあらわれてくるのです。そして、やがては奥田さんの所属するバンド・ユニコーンが活躍し、奥田さんもソロとして活躍しPUFFYに楽曲を提供したりプロデュースをしたりという痛快な音楽史につながっていくのです。

恋のかけら ダウン・タウン・ブギウギ・バンド 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:宇崎竜童、編曲:山屋清。ダウン・タウン・ブギウギ・バンドのシングル『スモーキン・ブギ』(1974 )B面、アルバム『続 脱・どん底』(1975)に収録。

ダウン・タウン・ブギウギ・バンド 恋のかけら(アルバム『続 脱・どん底』収録)を聴く

ボーカルのダイナミクスと感情のふれ幅がみせます。メロはきわめて落ち着いており、サビは朗々と。それにともなって、残響の量も自然と強調されて感じられたり、逆に少なく感じられたりとメリハリが生じます。メロでは小さな酒場で恋の嘆きをこぼしているだけなのに、サビで数千人の入るホールの前で感情をあらわにしているみたいな様相に変わるのです。

彼らのサウンドのトレードマークであろうギターはこの楽曲では鳴りをおさえています。トレモロがかかったようなゆらめくトーンで感情の揺らぎを表現しているみたいに、アルペジオのコード伴奏の脇役に徹します。

かわりに雄弁なのがピアノ。表拍に向かってキツめに「タターーン!タターーーン!」とウラウラあたりの拍を引っ掛けるプレイが絢爛な印象ですが、2ヴァース目あたりではブルージーなにごった、ぶつけた音程のニュアンスをだして汚しを効かせます、ウマイですね。

そしてストリングスもボーカルの感情の振れ幅に寄り添うように、サビで極大の響き。感想ではチェロあたりとヴァイオリンあたり、複数の音域でオクターブごしのユニゾンで主題のボーカルメロのトレースを提示します。

ドラムはコツっとリム、オープンショットしても音色自体がタスっときれの短いサウンドのスネアが印象的。ピアノは低音域もふんだんに叩いていますがEQやマイキングによるコントロールがよいのか太さの面をベースが掌握しており、音の棲み分けが気持ちよくなされています。サビではドラムがライドシンバルにオープンな感情の表現を託し、ストリングスとともに感情の発露を増幅します。

青沼詩郎

参考Wikipedia>スモーキン・ブギダウン・タウン・ブギウギ・バンド

参考歌詞サイト 歌ネット>恋のかけら

宇崎竜童|Ryudo Uzaki Official Websiteへのリンク

『恋のかけら』を収録したダウン・タウン・ブギウギ・バンドのアルバム『続 脱・どん底』(1975)