まえがき

キックの4分打ちにシキシキとシェーカーがかろみ。カラっとしたツインギターが左右に陣取り全編に渡り鋭い印象を添えます。キビキビした狙い済ましたストリングスとアルコの緩急の妙。サビではドラムなどのビート感がむしろ開放的に、疎密でいえば疎、緩急でいえば緩慢な感じになり曲調を演出し分けているのも聴きどころです。九月と主題しながらComing soon, winterと歌います、すこし気が早くないか?という気もするし、夏が過ぎたら実際冬がすぐなのも肌感覚として理解しうるかもしれません、そこに登場人物の心理と重なるものも少なからずありそうです。 作家陣の三浦徳子さん・小田裕一郎さんは最近私が鑑賞したばかりの例でいうと杏里さんの『CAT’S EYE』と同一のおふたりであり、松田聖子さんの『裸足の季節』や『青い珊瑚礁』もまたおふたりの作歴です。編曲の信田かずおさんはキーボードで参加、寺内タケシとブルージーンズのメンバーさんでもあります。

九月の夕暮れ 松田聖子 曲の名義、発表の概要

作詞:三浦徳子、作曲:小田裕一郎。松田聖子のアルバム『SQUALL』(1980)に収録。

松田聖子 九月の夕暮れ(アルバム『SQUALL』収録)を聴く

サビでダブルになる松田聖子さんの歌唱の絶対王者ぶり。もうこれで夏が永遠に昇華された気分になります。サビの終り際になってダブルトラックがとれて、シングルになり憐れみがふわっと香り、スケール・調もまた元の同主短調に戻ってしまいます。そしてホワっとしたアタックがどこかホルンを思わせるシンセサイザーの音色が入道雲みたいにふわっと上行音形で浮かびあがります。

エレキギターのサスティンの強いドライなサウンドが全編に渡っている印象がイヤフォンで聴いたときにはなんとなく感じたのですが、Aメロの入りのあたりはすこし息をつく間もあるかなと感じなおしました。リードトーンとは別に、クリーンクランチでカッティングしているエレキもそれはそれでいます。

ストリングスの、高域でキビキビとしたアルコするパートと、ずりっとポルタメントで音程をずりあげる中声内声のかけあわせが圧巻。

ベースの動きはタッチがかるくて足腰もかるいキャラクターがでています。ドラムは変幻自在にパターンを変える。サビでタムをここぞという虚空にドゥンと浮かべるのと、恒常的なAメロなどのキック4つにスネア二つのシンプルで王道なパターンにシェーカーの軽いサウンドが歯触りを添えます。リズムよし。

エンディングになんだか戦隊モノのようなロボットやヒーローアニメのレジェンドみたいな展開がつくのも聴きどころです。冬に何かが起こるのを「次週予告」しているみたいな。もう来週あたり冬が来ちゃうのかもしれない。

青沼詩郎

参考Wikipedia>SQUALL (松田聖子のアルバム)

参考歌詞サイト 歌ネット>九月の夕暮れ

松田聖子 公式サイトへのリンク

『九月の夕暮れ』を収録した松田聖子のアルバム『SQUALL』(1980)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】夏すぎてすぐ冬? 九月の夕暮れ(松田聖子の曲)ギター弾き語り』)