狂わせたいの 山本リンダ 曲の名義、発表の概要

作詞 :阿久悠、作曲:都倉俊一。山本リンダのシングル(1972)に収録。

山本リンダ 狂わせたいのを聴く

“一つの国でも私に欠けても 決して損はない 今日から毎日花園みたいな くらしが出来るのさ”(『狂わせたいの』より、作詞:阿久悠)

これですよ。自己肯定感という言葉が馬鹿ばかしくなります。自己至上感かよ!(ブラボー👏)

アタシぁ国まるごとにも劣らない価値だよと。その気概でみんな生きていったらいいに決まっている。いや、決まってるは言い過ぎかもしれませんがリンダさん(愛称で失礼)の音楽が私をそういう気にさせるのです。みんなに檄を飛ばし、鼓舞します。総国民の野性を喚起する原始的パワーがリンダさんの音楽、歌唱、楽曲には秘められている……いえ、秘められているは大間違いでした。露出しまくり、これみよがしにひけらかされているのです。いやでも目に入るのです。そして野性のソースを脊髄になみなみと注がれ、私はグモォーと野獣の叫びを上げて走り出す。そんな気分にさせるのです。

イントロから16分割で八つ裂きにするようなベースとエレキギターのオクターブユニゾンが何かおっぱじまりそうなソワソワ感。ベースのブリブリざきざきしたストロークの質感がたまりません。ドラムが点を止め、ちゃきちゃきとタンバリンが高揚を煽るのなんの。ピアノのストロークが2・4拍目を強調します。エレキギターは出所を絞って、リンダさんの歌唱の残響が映える空間をきちんと確保します。

右にストリングスがきびきびと隊列をなします。女王に従順な訓練された兵団のごとく。サビで左にブラスセクションがあらわれ、戴冠の儀かよという華々しさとボスの降臨感。

音数のメリハリが効いていてタイトなのです。タイトなバックトラックの演奏に、女王のお言葉のエコー(こだま)が効果的にうるうると響きます。リンダさんの歌唱は常にダブルトラックで、神の言葉のような輪郭の常軌を逸した存在感を終始放ち続けます。

エンディングの潔い終わりかた。2分半のサイズ。これだよ。この毅然としたリーダシップ、カリスマ神通力。リンダは私の思うスター像の鑑です。最強だね。一国と言わず、何カ国でも従いやがれ!

青沼詩郎

参考Wikipedia>山本リンダ

参考歌詞サイト 歌ネット>狂わせたいの

山本リンダ 公式サイトへのリンク

不死鳥の如し“こまっちゃうな”

『こまっちゃうナ』の本人名義の2025年リメイク『こまっちゃうな』が4月23日にリリースされました。くっきりした音像のオケにますます浮世離れ。際どさ冴えわたる妖魔も真っ青な歌唱がコミットします。エンディング付近に新しいラップ(早口言葉?)パートが書き加えられ、ますます雑食性を増し現代日本の大衆音楽ごと喰らおうとするかの如く。もはや肉食のイメージすら超越。

そもそもは2024年の金子みゆさんによるカバー。そのアレンジ・オケトラックによる、山本リンダさんご本人歌唱による差し替えバージョンがリンダさんの2025年バージョンという理解で良さそうです。素晴らしいリレーションシップですね。

『狂わせたいの』を収録した山本リンダの企画盤『踊れる歌える山本リンダ』(1991)

『狂わせたいの』を収録した『「山本リンダ」SINGLESコンプリート』(2007)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『狂わせたいの(山本リンダの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)