ガラスづくりの歌の序章

編曲とサウンドがなすホモフォニーのコントラストすなわち主旋律と和音による伴奏の主従関係のはっきしたイントロに心惹かれました。そのちょっと冷たい無機質なサウンド、ウロウロして結局どこへも行けない帰結感の薄いカデンツの連綿とした連なりが「街の風景」という主題を表現しており見事です。

コード進行に目をこらせば、たとえば歌詞 “追い立てられる街の中”……あたりからですと

Cm、Bm、Am、Bm、Cm、Bm、Am、Bm、Am、C、Am、C、Am、Cm、D……

そしてサビといえようか“心のハーモニー” あたりから

Em、Bm、Em、Bm、Em、Bm、Em、Bm、Am、Cm、D……

と来て、サビの終わりで主題の「街の……風景」と結ぶDメージャーのコードを経由してGに解決しようかと思えば先ずはCmにいってしまう……

そしてそこでイントロと相似形の孤独なガラスのように透き通ったトーンの間奏メロディが出てくるのです、このサビシいメロディがきっと主人公の写し鏡なのでしょう。

尾崎さんの魂の嘆きであり叫びの権化である歌声を主役にしつつも、背景としてのサウンドや編曲、楽曲の音楽的な骨子の面に注目しても、やり場のない想いを胸に宿し、行き場すらもない境界人間としての十七歳の魂の姿が表現されているのです。

主人公の外側を写すかのような主題『街の風景』の響きが空虚で哀愁の映る余白があり、後続曲においてその精神の叫びが開陳される前のアルバムのオープニングとして相応しい楽曲だと思えます。

街の風景 尾崎豊 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:尾崎豊。編曲:西本明。尾崎豊のアルバム『十七歳の地図』(1983)に収録。

尾崎豊 街の風景(アルバム『十七歳の地図』収録)を聴く

永遠にどこにも行けないことを体現するみたいに入念です。種々のパートの音がまとう残響とこだまの効果が潤い感がありますが、広い空間を思わせ、主人公の孤独を相対的に強調します。

うろうろして帰れないみたいに、ギターのアルペジオが浮かんだり沈んだりする音形。

ドラムが緻密にメモリを刻み、ハイハットの安定のもとキックやスネアのパターンに変化を出したりして、都市化された風景のなかでの光景の移ろいを思わせます。

心のハーモニー……とするサビのところでオーバーダビングのボーカルのハーモニートラックがあらわれます。ハーモニーとしつつも、誰か別の仲間があらわれてくれるのでもなく、己の心の解釈にべつの角度の視座を加える試みをほどこしたような孤独な哀愁が歌唱の質感のはしばし、音の切り方や響きのすぼめ方にあらわれます。

キュゥイーンとポルタメントしてあがっていく、スライドエレキギターにも似た音色が何かの変化を兆してくれているんじゃないか?との希望を掲げつつも、音の景色は変化したりピリオドしたりするでもなくフェイド・アウトしていきます。この青は永遠だ。

青沼詩郎

参考Wikipedia>十七歳の地図 (アルバム)

参考歌詞サイト 歌ネット>街の風景

『街の風景』を収録した尾崎豊のアルバム『十七歳の地図』(1983)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『街の風景(尾崎豊の曲)ガラスづくりの歌の序章 ギター弾き語りとハーモニカ【寸評つき】』)