まえがき

トランペットが吹きやすいであろうB♭調から始まって、半音ずつずりずりずり上がり……5回目の転調でついに元調の4度上の調:E♭メージャーに到達するボビー・ダーリンの音源を参照しました。数多の音楽家にカバーされたり、市井の音楽愛好家や楽団にも演奏されている曲だと思います。ルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルドなどのカバーも認知を得ているでしょうか。 ボビー・ダーリンのカバーは1959年。彼はコニー・フランシスの作曲家としてのキャリアをお持ちだそう。 ボビー・ダーリンの音源は、管楽器のみで築くハーモニーやリズムのかけあいやシンクロが圧巻です。ピアノも入っていますが至って軽いサウンド。ドラムの開放的な音色が快感。ボビー・ダーリンの洒脱で艶のある歌唱も耳福です。

Mack the Knife “三文オペラ” 劇中歌 曲の名義、発表の概要

作詞:ベルトルト・ブレヒト(Bertolt Brecht)、作曲:クルト・ヴァイル(Kurt Weill)。1928年初演のミュージカル『三文オペラ』(メッキー・メッサーのモリタート、原題:Die Dreigroschenoper)劇中歌。英訳:マーク・ブリッツスタイン(Marc Blitzstein)。 ボビー・ダーリン(Bobby Darin)のリリースは1959年のシングル、アルバム『That’s All』に収録。

Bobby Darin(ボビー・ダーリン)のMack the Knifeを聴く

左寄りにまとまった定位ではじまるような感覚があります。左にボーカルも寄っている感じがして。長い音符でハーモニーをつくる管が左寄り。短くリズミカルにオブリガードを入れる管楽器が右寄りの定位。でもこの定位の感じも曲が進むと印象が変わってきます。意図的なものなのでしょうか。

ドラムのキックの入れ方や開放的な音色が良い。ハイハットはチキチキとむしろタイトでこれまた気持ち良い。ベースとピアノの音色はかろやかなミックス感です。でもピアノの後半のアソビの入れ方など猛烈。サウンドの質量の比重は管楽器やリードボーカルに譲りますが、この鍵盤奏者、至って芸達者です。

曲のなかばからコンガが左のほうに寄り添い、エンディングに向けてダイナミクスがいつのまにかパワフルになっています。バンド全体のスウィング感も強烈になってきます。

ボビー・ダーリンの、こまかいフェイクが自由自在です。ee!とか、hu! とか、瞬間瞬間で豊かなツラがまえを見せるミュージカル由来の曲らしいパフォーマンスに適合しています。コニー・フランシスの作曲家さんで、自分自身も歌手としてのパフォーマンスに秀でているボビー、彼の現役の同時代に私もいたら、たいへん華やかな存在に思えたかもしれません。

曲の後半あたりは登場人物の人名をたくさん連ねておりそこもミュージカル由来の曲っぽさを私に印象づけるところです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>マック・ザ・ナイフクルト・ヴァイルベルトルト・ブレヒト三文オペラマーク・ブリッツスタインボビー・ダーリン

参考歌詞サイト KKBOX>Mack the Knife

参考歌詞和訳掲載サイト 世界の民謡・童謡>マック・ザ・ナイフ Mack the Knife 歌詞の意味 和訳 ジャズ

『Mack the Knife』を収録したボビー・ダーリン(Bobby Darin)のアルバム『That’s All』(1959)