まえがき

CメージャーのヴァースからGメージャーのコーラスへのしれっとした移ろいぶりが見事です。歌詞に比重があるように見えて機能和声で解釈しても非凡ですしスライドギターやメロトロンのストリングス(?)が合わさった個性的な音の立ち上がりやサスティンのカーブなど音楽的にも聴きどころに富みます。飽くなき野心を覚えますね。

Mind Games John Lennon 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:John Lennon。John Lennonのシングル、アルバム『Mind Games』(1973)に収録。

John Lennon Mind Gamesを聴く

「ちゅぃん」……とずりあげるポルタメント演奏のスライドギターが「ミー、ソー・ラー」(Cメージャー調)の音をひたすらにリフレインします。これが恒久な人間活動を象徴する音形:モチーフなのかもしれません。

メロトロンが入っているらしいけれど、スライドギターと一緒の動きをしている感じの、非常に高い音域のストリングスみたいな音色(ヒィィィン……とサスティン)これがメロトロンなのかな?あるいはほかの音色なのか。

Wikipediaなどみるとジョンによるクラビネットがクレジットされているようで、ケン・アッシャーはハモンド・オルガンとメロトロン。クラビネットとは別に、絢爛で華のあるアコースティックピアノの音色も聞こえるように思えるのですがケンが演奏しているのでしょうか。

ジョンのリードボーカルは終始左右にダブルトラック。言葉尻などの自然なズレ、揺らぎのニュアンスが気持ちいい。センターにはあえてリードボーカルを置きません。

ベースのよく動くフレーズ、高めのフレットで重音を出すようなオカズ、オブリが機敏です。ブリッジ(ミドル・エイト)というのかコーラスというのか“Love is the answer”のところではベースが頭(1拍目のオモテ)をあえて空けるフレージング。声を張り上げ、堂々たる移勢を帯びるリードボーカルに対して、腰の軽さで対比を出すベースプレイが絶妙です。

ドラムの手数のメリハリがまた達者。フィルインのストロークの細密さがテクニカルですがヴァースは恒常的で間引きの効いたというか、多くも少なくもない刻みが適切。ライドなどのティップのストロークの安定したサウンドも耳心地よし。

良いミュージシャンと良いベーシックをつくって、愚直なほどに鮮烈で印象的なモチーフのリフレインを敷き、ヴァースのCメージャー調とブリッジのGメージャー調の和声的なギミックを仕掛け、音楽を楽しむ前提となる平和の尊厳を日常会話の中で紳士的に含ませるみたいな歌詞のアティテュードが気持ち良いアルバム表題曲にして1曲目。私もあなたもマインド・ゲームをずっとプレイしている、その綾の美しさを1人ひとりが握っているのです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>マインド・ゲームス (ジョン・レノンの曲)マインド・ゲームス

参考歌詞サイト JOYSOUND>Mind Games

ジョン・レノン ユニバーサルミュージックサイトへのリンク

『Mind Games』を収録したJohn Lennonの同名のアルバム(1973)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】Mind Games(John Lennonの曲)ギター弾き語り』)