まえがき
青空の天井をノックするようにサビで5度の和声音程が半音ずつ上がり緊張感を増し、清涼に抜けていくリードボーカルメロディが美しくエモい。 サザンが夏フェスを退いても永遠に夏の記憶に添い遂げてくれるでしょう。
みんなのうた サザンオールスターズ 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:桑田佳祐。編曲:編曲:サザンオールスターズ & 小林武史。サザンオールスターズのシングル(1988)。
サザンオールスターズ みんなのうたを聴く
主和音の根音からかぞえて5度の音程を半音ずつあげ、天井をつきあげるサビのリードボーカルメロディがso sweetなのはいうまでもなくこの楽曲の重要で主要な印象だと思うのですが、改めて聴いてみると心臓のバクバク感がすごい。常にわくわくさせるのです。
その要因はつまりキックドラムにあります。ずっと4つ打ちをしています。ドチ・ドチ・ドチ・ドチ……1小節に4回の拍動。テンポが速いので、この速さで心臓が鳴るのは全力疾走で短距離を踏破した直後くらいではないでしょうか。それくらいの速さの心臓の動きを表現したみたいなキックが常に鳴っているのです。このワクワク感・臨場感の秘密……というほどおおげさに隠れられてもいませんが、その直接的な要因はこのキックドラムのデザインにある。
ベースもこれについてまわり、心臓がはち切れちゃうよ!というくらいにこの速いテンポにおいて8分割のビートをくまなく敷き詰めたり、8分割と4分音符を絡めた音形でビーチの観光客の頭の上を浮遊するトンビみたいな自由な軌道でキックドラムが敷くレールのうえをふわふわと舞います。
織重なるシンセのレイヤーがうるうるでリッチなサウンド。ほわぁんとしたカルピスの口あたりみたいなやわらかいサウンド、ブラス、ストリングスなどがここぞで交錯します。左のはしのほうにピアノのトーンが明瞭な輪郭でトテトテと浜辺に遊ぶ。主にピアノのトーンが原由子さんで、おおむねそれ以外の多様な音色が小林武史さんが担当したものかと想像します。
「熱い波がまた揺れる」
たったこれだけのCメロ(大サビ)展開。アカペラのような音景でハダカのこころのコミュニケーションをおもわせます。開放的な昼間のビーチへのカウンターとして、きみときみと……特定の誰かの間だけでの閉鎖的な秘密の共有を思わせるサウンドが色っぽい。つかの間の大サビ(それまでにない)展開をはさんで、また恒常の心臓バクバクビーチに戻っての最後のサビですがこれまでにないドゥ・ワップモチーフが左右から耳に息を吹きかけます。サビのリフレインであろうと、エンディングにむかって景色の豊かさが最高潮に達するようにデザインされた編曲が耳の神かよ。拝みます。
青沼詩郎
参考Wikipedia>みんなのうた (サザンオールスターズの曲)、海のYeah!!
SOUTHERN ALL STARS サザンオールスターズ 公式サイトへのリンク
『みんなのうた』を収録したサザンオールスターズのベストアルバム『海のYeah!!』(1998)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】みんなのうた(サザンオールスターズの曲)ギター弾き語り』)