まえがき
フォービートのジャズフィール。大仰な移勢の連続するコーラスのベースとユニゾンした上行音形のリフ、全体のリズムのキメが波状に押し寄せます。これが表題の「ムーンダンス」のアンストッパブルな高揚と緊迫感でしょうか。サックスの出入りが熱量の起伏を成します。後半にさしかかり、冒頭の歌詞に戻るところから圧巻のボーカルフェイクというのかバリエーションというの、歌い回しを大胆に変えています。音数を絞ったベーシック上でしゃがれたようなエッジのあるボーカルが哀愁を、フルートが殺伐とした雰囲気を醸す様はどこか日本的なわびさびも見出せる気がします。統一感がありエンドレスリピートで聴いてしまうセルフプロデュースアルバムの表題曲です。
ヴァン・モリソンはブルー・アイド・ソウルのジャンルで語られる向きのあるバンド「ゼム(Them)」のメンバー。北アイルランドのベルファスト出身。地図アプリなどで北アイルランドをざっくり眺めると、大きな入江、大きな湖があり、ベルファストは河口から河川(ラガン川)を中心に都市が広がっており、ダブリンに次ぐ都市と形容されることもあるようです。「タイタニック・ベルファスト(タイタニック記念館)」があるそうです。
Moondance Van Morrison 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Van Morrison。Van Morrisonのアルバム『Moondance』(1970)収録。
Van Morrison Moondance(アルバム『Moondance』)を聴く
Aマイナーのスケールをかろやかに渡るボーカル。存在感があります。ニール・ヤング、Dr. ジョンなど私の好きなボーカリストの名前を思い起こします。哀愁や風情があって、かつ埋もれない独特の妖しい輝きがあります。
右にピアノ。左のジャッ、ジャーッと1拍目オモテと2拍目ウラのリズムを決めるアコギのストロークが対になっています。管楽器では左にフルート、右にサックスが対になっています。出所の棲み分けで熱量の起伏がデザインされていて、ヴァースなど起伏の「伏」の部分ではフルートが、起伏の「起」を思わせる部分ではサックスが高鳴ります。
ベースのウラ拍の引っ掛けかたがタイトなハネ感が鋭いグルーヴ。ドラムのサウンドがかろやかでエアー感があり、かつドライな音像で自然で私の耳になじみます。エレキギターなどがおらず、倍音のギラつく音域はサックスやシンバル、あるいはピアノの自然な豊かな音域、そして当然ヴァン・モリソンの声の倍音が月夜に輝きを放ちながら雄弁に躍り出ます。
私の地元の音楽仲間にお声がけいただき、ジャズバンドでのドラムプレイでこの曲を演奏する機会が最近あったのがきっかけで知った曲でしたが、アルバム通してとてもサウンドに統一感があり、40分程度のサイズ感も絶妙で延々とリピートして聴きました。
青沼詩郎
Van Morrison Official Websiteへのリンク
参考Wikipedia>ムーンダンス、ヴァン・モリソン、ベルファスト
『Moondance』を収録したVan Morrisonのアルバム『Moondance』(1970)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】移勢の波状攻め『Moondance(Van Morrisonの曲)』ギター弾き語り』)