まえがき
挑戦的にも思える曲調は、映画『卒業』に登場するMrs. Robinsonの人柄を表現しているのでしょうか。 挑戦的ですが、ビート感はいたってかろやか。アコギのハンマリングを織り交ぜたリフレインが印象的です。アコギのストラミング、コンガのビート、ハイハットなどが身軽な疾走感を演出。コンガの印象的なグリッサンド奏法:ムースコールが野生的で本能におもむくまま?!な原始的な味わいのアクセントを添えます。 F#調のヴァースなのかなとも思うのですがコーラスではAメージャーの響きで明るい。印象的なアコギのリフにしても然り、音楽的に耳を惹きつける要素、構成や進行のうつろいで魅せる仕掛けにも富んでいますし、押韻を多用する歌詞もまた耳で捉えるべき彼らの音楽要素の一部になっていることはいうまでもありません。 映画『卒業』には、花嫁を挙式のその瞬間に第三者(主人公)が連れ出すシーンが含まれているといいます。その疾走(脱走、離脱)のフィールが楽曲にも映り込んでいるのかどうか。挙式から花嫁を連れ出すという演出(あらすじ)はもはや娯楽作品の世界での常套の展開に思えます。映画『卒業』がそうした手段(制作者側の)があることを強く印象付けるのに一役買っている・あるいはほとんど始祖といえる存在なのか、あるいはもっと前から存在するのか。ありふれたドラマのようで、現実では見かけたことがありません(自分が新郎新婦の友人筋や親族であったとして、できれば目撃したくない……)。先が思いやられます。
Mrs. Robinson Simon & Garfunkel 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Paul Simon。Simon & Garfunkelのアルバム『Bookends』(1968)に収録。映画『卒業(The Graduate)』(1967)に用いられ、サウンドトラックにも収録。
Simon & Garfunkel Mrs. Robinson(アルバム『Bookends』収録)を聴く
ボーカルが耳元で囁く夫人みたいにソフトです。単一のメロディをダブリングしているサウンドもソフト。シンクロした歌詞と旋律によるハーモニーもソフトで柔和。なんだかフランス語をホヨホヨっと囁いているような……フレンチ・ポップ、シャンソンみたいな洒脱な味わいに通ずるものを幻覚しました。
左にベースがふってあって、ずももと曲の足並みをひっぱります。ドラムスはハイハットが目立ちますが、ド、ドド……1・3拍目に重心を置きながら2拍目ウラにひっかけるパターンです。シキシキ……とシェーカーが曲のかろみを演出する隠し味というか名脇役。
ボーカルが神秘的で、どこから降り注いでいるの?!という神から目線な印象。右側に少し定位が寄っているのでしょうか。アコギのストラミングは中央付近。カウンターやリフ・オブリガードのアコギが右寄り定位で、質量感があってグラマラスなサウンド。エンディングで右定位のアコギとシェーカーだけが残って、オケは先に消えて、フェイドアウトしていくというミックス・アレンジが斬新です。
F#調とAメージャー調をウロウロするところ。ウロウロというか、コーラスとヴァースの区別ははっきりしているかもしれませんが……主人公が複数の女性のあいだで夢遊するのかな……映画のシチュエーションを想起させます。2面性がある曲です。
青沼詩郎
参考Wikipedia>ミセス・ロビンソン、ブックエンド (サイモン&ガーファンクルのアルバム)
参考歌詞サイト 世界の民謡・童謡>ミセス・ロビンソン 歌詞の意味・和訳 サイモン&ガーファンクルによる映画「卒業」サウンドトラック
『Mrs. Robinson』を収録したSimon & Garfunkelのアルバム『Bookends』(1968)