完全なるペンタトニックのイントロリフ

ドーレミソラド……というパーフェクトなまでのペンタトニックスケールのリフレインが印象づけます。

The Temptations『My Girl』の完璧なペンタトニックスケールでかつ上行音形一方通行のなめらかなリフ。

ヴァースのヴォーカルのグルーヴ感は聴いている分には至って耳にフィットする流麗さなのですが、いざ私も歌って真似してみようと思うと、ビートの感じ方や解釈の根幹たる感性がまるで違うのかなんなのか、難しいのです。弾き語りに向かない、の一言で片付けて良いわけもなしに、魅惑でミステリーなフィーリングがあります。

採譜させてなるものか、というようなフェイクのみで構成したみたいに思えるヴァースから、ブリッジのところでヴォーカルメロディの音価が大きく平易になります。この対比が聴き心地の緩急に直結していて気持ち良いところです。

この楽曲『My Girl』でリードヴォーカルを担当したデヴィッド・ラフィンはこの曲以降、グループでリードヴォーカルを担当するレパートリーが増えたといいます。

この曲の作者であるスモーキー・ロビンソンとロナルド・ホワイトのグループ、ザ・ミラクルズによるセルフカバーが『Time Out for Smokey Robinson & the Miracles』(1969)に収録されています。楽曲のリズム・ビートの解釈、分割の感覚がまた全然違っていて面白いです。テクスチャーが深い。歌い出しからハイトーンな声に驚愕で、テンプテーションズがパフォーマンスしたCキーから4度も上げてFキーでパフォーマンスしています。

My Girl The Temptations 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Smokey Robinson、Ronald White。The Temptationsのシングル(1964)、アルバム『The Temptations Sing Smokey』(1965)に収録。

The Temptations My Girl(アルバム『The Temptations Sing Smokey』収録)を聴く

右にベース、ドラムス。左にくだんのペンタトニックリフのエレキに、パコ!とキレのよいリズムを恒常的に刻むエレキがいます。ドラムのスネアの音がざらっとしていて、ロールで印象づけます。ピアノの音がまるっこくてマイルド。途中でハープがぽろんぽろんとグリッサンドしているみたいに聴こえる箇所があるのですが、ピアノあるいはアコースティックギターの音をハープみたいだなと私が幻聴しているのかわかりません。

ストリングスの音がみずみずしく、間奏でエレキのペンタトニックのリフと重なりつつトップラインをあらわにしたり、低域の弦が表層の覇権をとりに来たりと変化が豊かな様相です。

バックグラウンドボーカルも伸びているし、管楽器のやわらかなサスティンもいるのかあるいはこれも私の幻聴? 定位づけがなされて複数の楽器の前後やすみわけがステレオのなかで表現されてもいますが一方で好ましい意味でお互いにとけあってもいます。

ソフトに撫でるような声からしゃがれた声まで豊かな表情の幅をみせるデヴィッド・ラフィンの声が中央を握ります。作曲したスモーキー・ロビンソン(ら)は特定の歌い手、つまりデヴィッド・ラフィンを想定してこの曲を書いたといいます。こいつが歌うなら、こいつが歌うからこそ!の前提でこの曲を書いたようなんです。あたりまえのことかもしれませんが、実演家の個性を見抜き、活かす手腕や審美眼はなんだか日本でいったら筒美京平さんみたいだなと思いました。

Smokey Robinson & The MiraclesのMy Girl(『『Time Out for Smokey Robinson & the Miracles』収録)を聴く

16分割でかつちょっと弾んでいるみたいなグルーヴが絶妙。そして絹を撫でるようなぶっとびハイトーンボイスのインパクト大。ヴァースはうねるようなグルーヴをしつつ、途中でブリッジのところからバイテン(倍のテンポ)様のベーシックリズムパターンに変わり緩急が大きく豊かに表現されています。

右のほうに寄った管楽器が雄弁にごきげんにスウィングしています。リードボーカルの声にまけじと、さらに高い音域をヴァイオリンが舞ってみせます。ボンゴなのか、甲高いラテンパーカスが強靭な抜け感。

青沼詩郎

参考Wikipedia>マイ・ガール (テンプテーションズの曲)スモーキー・ロビンソン 

2023年にもアルバムをリリースしているスモーキー・ロビンソン。生涯現役ですね。2025年時点で85歳です。

参考歌詞サイト Genius>My Girl

Smokey Robinson Official Websiteへのリンク

『My Girl』を収録したThe Temptationsのアルバム『The Temptations Sing Smokey』(1965)

『My Girl』を収録したSmokey Robinson & The Miraclesのアルバム『Time Out for Smokey Robinson & the Miracles』(1969)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】完全なるペンタトニックのイントロリフ『My Girl(The Temptationsの曲)』ギター弾き語りとハーモニカ』)