個性のダシで煮込む率直な感慨の寄せ鍋
主人公の時間と、猫たちの人生(猫生)が接点をもち、重なったり交ったりするのを、率直な観察と感慨と、英語をまじえたちょっと茶目っ気のある言葉づかいで描きます。
辛辣にいえば「だからなんなんだ?」というくらいに日記的で、メッセージ性を日常の描写で希釈したような趣がありますが、その筆圧やタッチの質感に与えられたさりげない個性の積み重ね・レイヤーで魅せるところがサザンらしくもあると同時に、割合的にほとんどを占める桑田佳祐さんのソングライティングと違った個性を確立しているようにも思えます。
オルガンの音色が愛らしく、ソフト目で日常・コミカル路線のグループ・サウンズバンドのような趣がありますが、メインボーカルの動き、歌い回しが細かくてなおかつ方向や動きの性質が意外で、気ままで思わぬほうに動く主題の「猫」の特徴を意匠的に宿したメロディラインに思えて絶妙です。
「猫」を主題にしたり主題に含めたりしているジャパニーズポップスは結構例が多いと思うのでいろいろプレイリストを作って聴き比べてみるのも面白いと思います。
勝手なこじつけですが、率直な感慨の寄せ鍋を個性のダシで煮込む大衆感覚と個性の確立の塩梅、そこに滲み出る質感において、『カレーライスにゃかなわない』や『ニューヨーク』などにみるような真島昌利さんのソングライティングに通ずるものを感じもします。あくまで私のこじつけですが、ぜひそれも含めて色々聴いてみてください。
猫 サザンオールスターズ 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:大森隆志。サザンオールスターズのアルバム『NUDE MAN』(1982)に収録。
サザンオールスターズ 猫(アルバム『NUDE MAN』収録)を聴く
大森さんののどかな歌声のダブリングが楽曲に感性の芯を通します。
間奏のあと、Aメロを省略してBメロにすぐ入る。
そこで、“二人でPoemを口ずさみ 歩いてた頃を思い出させて”(『猫』より、作詞:大森隆志)と歌われます。
そして、ABメロではない新しいセクションがここではじめて出てくるのです。Please!と掛け声が入って(桑田さんでしょうか?)オー・ファミリー・キャット♪と歌うところですね。
「二人」が主人公と猫のことをいっているのか、あるいは猫は猫として、主人公とwifeだったりするのか、wifeになる前の恋人だったりするのか、人生と猫生が重ね合わせになってリスナーが味わえます。
そして、猫生も人生も、どこかで転換点をむかえ、激変することもまた普遍です。楽曲のエンディング手前に来ての新しいセクションの登場に、そうした人生猫生の性が意匠されて思えます。
そして儚さもあとくされなく、スっといさぎよく楽曲はピリオドしてしまいます。まだまだ途中だ、ストーリーは続く……といわんばかり。未練がましさをふりきる潔さがさわやかな後味を残します。
青沼詩郎
参考歌詞掲載サイト サザンオールスターズ 公式サイト>猫 公式サイトに個別曲の歌詞まで備えているのですね。キャリアすべてを資源に活用する行き届いた姿勢が窺える充実した公式サイトです。
サザンオールスターズ Official Siteへのリンク 公式サイトのディスコグラフィページに本アルバムの鋭く的確なレビューが載っています。
『猫』を収録したサザンオールスターズのアルバム『NUDE MAN』(1982)