女神の右手に松明

バーンと元気なバンドの音が鳴る、ポヨポヨとかわいげのある楽しいオルガンの音が鳴る、甲本さんのボーカルの意味のあるようなないような、せつないような楽しいような、怒っているようないないような怒っている奴に怒っているような怒っていないような見たまんまのだからなんだというありふれた情景とそれに対する率直な感慨や生理感覚を叫び散らすサウンドですべてはOK!と思わせる説得力をもって私に言語を超越した恩恵として降り注ぎます。ハイロウズはこうでなくちゃ……という彼らのゴールデンドリップを感じる傑作アルバム『HOTEL TIKI-POTO』収録作でシングルカットもされているのが本曲『ニューヨーク』です。

小金井公園だとかダコタハウスだとかチェルシーホテルだとか、実在の固有名詞も出てくるあたり、現実の世界の放浪者のありのままの観察のまなざしを思わせます。

そこでこちらをからかっているみたいな押韻のダジャレをちらつかせ、誰も言及しないくらいに当然の真理を堂々と掲げ、ウンコも人間の体も100年くらいしたら大体一緒だなぁという大きな尺度の見地からの人間の儚さへの思考の到達をみずからそっと祝福するように楽曲のハイライトにあてがい、実在の都市でありながらそのイメージの代謝をつづける固有名詞「ニューヨーク」にすべてを背負わせて結論を宙吊りにし未来に通ずる青空に重ね合わせて仰ぐかのようなカタルシスをリスナーにふりまく痛快作です。

“あふれるハレンチ さもしさ100倍 100年たったら ウンコも残らないニューヨーク”(『ニューヨーク』より、作詞:真島昌利)

歌詞がなにを訴えているかを観察し考えることも意味があるけれど、透かして向こう側を見るきっかけをくれるのが音楽作品です。目先のウンコの質感の観察に釘づけになることのおかしさを皮肉っている気もするし、別に好きにしたらいいじゃんとの肯定を見出すのもまた自由なのです。

そういえばニューヨークには自由の女神がいますし、自由の国という理想を象徴する都市がニューヨークだという気もします。なんだかんだ、とても主題が鋭く真理を射抜いている……ああだこうだ考えることを嘲笑っている気もするけれど、ああだこうだ考えても結局つながり、ピンと電球の灯りが点き、深く腑に落ちる構造や質感を有しているのがハイロウズ作品、ひいてはヒロト&マーシー(愛称で失礼します)関連作品の凄みだと思います。

ニューヨーク THE HIGH-LOWS 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:真島昌利。THE HIGH-LOWSのアルバム『HOTEL TIKI-POTO』(2001)に収録、シングルカット。

THE HIGH-LOWS ニューヨーク(アルバム『HOTEL TIKI-POTO』収録)を聴く

すべてを統率する女神みたいにワシャワシャとアコギのストラミングがふりそそびます。

ドラムのちょっとだけ弾んだグルーヴの解釈とタイム感と、ベースのハイポジまで気ままに歌いに赴くまっすぐにつながった自由な描線が絶品。オルガンの描線と質感がリズムに櫛を通します。

ギターのキャラクターが実に豊かで、かなり鋭いサウンドをした脇役的なものから、間奏のあたりではあたたかで質量感に富む音色、そして楽曲の後半のほうではボトルネックでポルタメントするキュイーンという音色まで入ってきて、上方向への経過的な目線の動きが私に自由の象徴:ニューヨークを思わせます。

ブルーハーツもいい曲がいっぱいありますが、ハイロウズのチームワーク、アレンジ、演奏の質感、ことに本曲・本アルバムにおける結実には目を見張ります。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ニューヨーク (THE HIGH-LOWSの曲)HOTEL TIKI-POTO

参考歌詞サイト 歌ネット>ニューヨーク

↑THE HIGH-LOWS↓ Webサイトへのリンク

中古でも入手が難しかったり取引価格が高騰しがちだったりなハイロウズ作品、8つのオリジナルアルバムと2つのレアリティーズ(シングルやB面曲などアルバム未収録作を集めたコンピ)タイトル計10作品が2026年3月26日にプラケース仕様CDで再発。収録ソースは2020リマスターとのこと。

『ニューヨーク』を収録したTHE HIGH-LOWSのアルバム『HOTEL TIKI-POTO』(2001)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『ニューヨーク(THE HIGH-LOWSの曲)女神の右手に松明【ギター弾き語り・寸評つき】』)